法人格否認の法理
(昭和44年2月27日最高裁)
事件番号 昭和43(オ)877
この裁判では、
法人格否認の法理について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
およそ社団法人において法人とその構成員たる社員とが
法律上別個の人格であることはいうまでもなく、
このことは社員が一人である場合でも同様である。
しかし、およそ法人格の付与は社会的に存在する団体について
その価値を評価してなされる立法政策によるものであって、
これを権利主体として表現せしめるに値すると認めるときに、
法的技術に基づいて行なわれるものなのである。
従って、法人格が全くの形骸にすぎない場合、
またはそれが法律の適用を回避するために
濫用されるが如き場合においては、
法人格を認めることは、法人格なるものの本来の目的に照らして
許すべからざるものというべきであり、
法人格を否認すべきことが要請される場合を生じるのである。
そして、この点に関し、株式会社については、
特に次の場合が考慮されなければならないのである。
思うに、株式会社は準則主義によつて容易に設立され得、かつ、
いわゆる一人会社すら可能であるため、
株式会社形態がいわば単なる藁人形に過ぎず、
会社即個人であり、個人則会社であって、
その実質が全く個人企業と認められるが
如き場合を生じるのであって、
このような場合、これと取引する相手方としては、
その取引がはたして会社としてなされたか、
または個人としてなされたか判然しないことすら多く、
相手方の保護を必要とするのである。
ここにおいて次のことが認められる。
すなわち、このような場合、会社という法的形態の背後に
存在する実体たる個人に迫る必要を生じるときは、
会社名義でなされた取引であっても、
相手方は会社という法人格を否認して恰も
法人格のないと同様、その取引をば
背後者たる個人の行為であると認めて、
その責任を追求することを得、そして、また、
個人名義でなされた行為であっても、
相手方は敢て商法504条を俟つまでもなく、
直ちにその行為を会社の行為であると認め得るのである。
けだし、このように解しなければ、
個人が株式会社形態を利用することによって、
いわれなく相手方の利益が害される虞があるからである。
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