国選弁護人の辞任の申出と解任の裁判
(昭和54年7月24日最高裁)
事件番号 昭和51(あ)798
この裁判では、
被告人の国選弁護人選任請求を却下した裁判所の措置の当否と
憲法37条3項について裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
被告人らは、第一審においては、
法廷闘争という名のもとに権利行使に藉口して
それまでの主張を固執し、裁判長の訟訴指揮に服さず、
そのため裁判所は、退廷命令ないし
拘束命令を再三再四発することを余儀なくされている状況であった。
右事実によれば、被告人らは国選弁護人を通じて
権利擁護のため正当な防禦活動を行う意思がないことを
自らの行動によって表明したものと評価すべきであり、
そのため裁判所は、国選弁護人を解任せざるを得なかったものであり、
しかも、被告人らは、その後も一体となって右のような状況を
維持存続させたものであるというべきであるから、
被告人らの本件各国選弁護人の再選任請求は、
誠実な権利の行使とはほど遠いものというべきであり、
このような場合には、形式的な国選弁護人選任請求があっても、
裁判所としてはこれに応ずる義務を負わないものと、
解するのが相当である。
ところで、訴訟法上の権利は誠実にこれを行使し
濫用してはならないものであることは
刑事訴訟規則一条二項の明定するところであり、
被告人がその権利を濫用するときは、
それが憲法に規定されている権利を行使する形をとるものであっても、
その効力を認めないことができるものであることは、
当裁判所の判例の趣旨とするところであるから
第一審が被告人らの国選弁護人の
再選任請求を却下したのは相当である。
このように解釈しても、
被告人が改めて誠実に国選弁護人の選任を請求すれば
裁判所はその選任をすることになるのであり、
なんら被告人の国選弁護人選任請求権の
正当な行使を実質的に制限するものではない。
したがって、第一審の右措置が憲法37条3項に違反するものでないことは
右判例の趣旨に照らして明らかである。
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