捜索差押許可状の呈示に先立ってホテル客室に入室した措置の適法性
(平成14年10月4日最高裁)
事件番号 平成14(あ)413
この裁判では、
捜索差押許可状の呈示に先立って
ホテル客室に入室した措置の適法性について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,
警察官らは,被疑者に対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき,
被疑者が宿泊しているホテル客室に対する捜索差押許可状を
被疑者在室時に執行することとしたが,
捜索差押許可状執行の動きを察知されれば,
覚せい剤事犯の前科もある被疑者において,
直ちに覚せい剤を洗面所に流すなど短時間のうちに
差押対象物件を破棄隠匿するおそれがあったため,
ホテルの支配人からマスターキーを借り受けた上,
来意を告げることなく,施錠された上記客室のドアを
マスターキーで開けて室内に入り,その後直ちに
被疑者に捜索差押許可状を呈示して捜索及び差押えを
実施したことが認められる。
以上のような事実関係の下においては,
捜索差押許可状の呈示に先立って警察官らが
ホテル客室のドアをマスターキーで開けて入室した措置は,
捜索差押えの実効性を確保するために必要であり,
社会通念上相当な態様で行われていると認められるから,
刑訴法222条1項,111条1項に基づく処分として許容される。
また,同法222条1項,110条による捜索差押許可状の呈示は,
手続の公正を担保するとともに,
処分を受ける者の人権に配慮する趣旨に出たものであるから,
令状の執行に着手する前の呈示を原則とすべきであるが,
前記事情の下においては,警察官らが令状の執行に着手して
入室した上その直後に呈示を行うことは,
法意にもとるものではなく,捜索差押えの実効性を
確保するためにやむを得ないところであって,
適法というべきである。
したがって,これと同旨の原判断は正当である。
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