医療観察法51条1項の解釈適用
(平成29年12月25日最高裁)
事件番号 平成29(医へ)20
この裁判では、
医療観察法51条1項の解釈適用について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
最高裁判所は,医療観察法の再抗告事件において,
同法70条1項所定の理由が認められない場合であっても,
原決定に同法64条所定の抗告理由が認められ,
これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められるときは,
職権により原決定を取り消すことができると解すべきである。
原々審は,入院決定が治療可能性を認めたにもかかわらず,
本件意見が,半年ほどの入院治療により,
対象者の精神障害やその程度,症状に特段の変化がないのに
治療可能性が認められないとしたことから,
入院決定時に念頭に置かれていた治療が
十分に行われたとはいえない,
と判断したものと解される。
しかし,仮にそのような場合であっても,
原々審は,裁判所が退院の許可の申立て等に対する判断を行う際に
指定入院医療機関の管理者の意見等を
基礎としなければならないとする
医療観察法51条1項の趣旨を踏まえて,
本件意見が現在の対象者の状態や
治療可能性について述べるところの
合理性・妥当性を審査すべきであった。
この審査に当たり,原々審は,
必要に応じてカンファレンス等を通じて
指定入院医療機関の管理者等から
本件意見の趣旨や根拠を聴取するなど,
関係者との十分な意見交換を行い,
更に必要性が認められれば,
新たに鑑定を命じる,審判期日を開くなどの
適宜の調査を行うべきであった。
しかるに,原々審は,このような調査を行うことなく,また,
入院決定時の判断を本件意見に
優先させるべき理由を十分に説明することもなく,
直ちに本件意見を排斥したものである。
これらの事情に照らすと,各原々決定には,
医療観察法51条1項の解釈適用を誤り,
本件意見の合理性・妥当性の審査を尽くすことなく
これを排斥した点において,審理不尽の違法があり,
これを維持した各原決定にも
同様の違法があるというべきであって,
この違法は各原決定に影響を及ぼし,
各原決定を取り消さなければ
著しく正義に反するものと認められる。
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