未成年後見人が未成年被後見人所有の財物を横領した場合

(平成20年2月18日最高裁)

事件番号  平成19(あ)1230

 

この裁判では、

家庭裁判所から選任された未成年後見人が

未成年被後見人所有の財物を横領した場合に、

刑法244条1項の親族間の一定の財産犯罪について

犯人の処罰の特例が準用されるかどうかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

刑法255条が準用する同法244条1項は,

親族間の一定の財産犯罪については,

国家が刑罰権の行使を差し控え,

親族間の自律にゆだねる方が望ましいという政策的な考慮に基づき,

その犯人の処罰につき特例を設けたにすぎず,

その犯罪の成立を否定したものではない。

一方,家庭裁判所から選任された未成年後見人は,

未成年被後見人の財産を管理し,

その財産に関する法律行為について

未成年被後見人を代表するが(民法859条1項),

その権限の行使に当たっては,

未成年被後見人と親族関係にあるか否かを問わず,

善良な管理者の注意をもって

事務を処理する義務を負い(同法869条,644条),

家庭裁判所の監督を受ける(同法863条)。

 

また,家庭裁判所は,未成年後見人に

不正な行為等後見の任務に適しない事由があるときは,

職権でもこれを解任することができる(同法846条)。

 

このように,民法上,未成年後見人は,

未成年被後見人と親族関係にあるか否かの区別なく,

等しく未成年被後見人のためにその財産を誠実に

管理すべき法律上の義務を負っていることは明らかである。

 

そうすると,未成年後見人の後見の事務は

公的性格を有するものであって,

家庭裁判所から選任された未成年後見人が,

業務上占有する未成年被後見人所有の財物を横領した場合に,

上記のような趣旨で定められた刑法244条1項を準用して

刑法上の処罰を免れるものと解する余地はないというべきである。

 

したがって,本件に同条項の準用はなく,

被告人の刑は免除されないとした原判決の結論は,

正当として是認することができる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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