業務上横領(共犯と身分)
(昭和32年11月19日最高裁)
事件番号 昭和30(あ)3640
この裁判では、
村長、助役が収入役と共謀の上、収入役の保管にかかる
新制中学校建設資金の寄附金を横領したときは、
刑法第65条第1項により同法第253条に該当する共犯となるが、
村長、助役は業務上物の占有者たる身分がないから、
同法第252条第1項の刑を科すべきものであると
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
原審の是認した第一審判決の認定した判示第一事実は、
被告人Aは元稲敷郡a村々長及び
同村新制中学校建設工事委員会の工事委員長、
同Bは元同村助役及び同工事委員会の
工事副委員長として右Aを補佐していたものであるが、
当時同村収入役として出納その他の会計事務を掌り、
傍ら前示中学校建設委員会の委託を受け同校
建設資金の寄附金の受領、保管
その他の会計事務を管掌していたEと共謀の上、
同人が昭和24年4月10日頃から同年10月11日頃までの間
稲敷郡a村F外190余名から学校建設資金として
前記工事委員会又はa村に対する寄附金として
合計金23万1550円目を受け取りこれを業務上保管中、
該金員中から合計金8万1647円を別表記載の如く
昭和24年7月23日頃から同年12月頃までの間ほしいままに
稲敷郡a村G方外一個所において、
同人外一名から酒食等を買い入れてこれが代金として支払い、
もってこれを費消横領したというのであり、
挙示の証拠によると、右Eのみが昭和24年4月10日頃より
同年8月30日までの間
右中学校建設委員会の委託を受け同委員会のため、
昭和24年8月31日より同年12月頃までの間a村の収入役として
同村のため右中学校建設資金の寄附金の受領、
保管その他の会計事務に従事していたものであって、
被告人両名はかかる業務に
従事していたことは認められないから、
刑法65条1項により同法253条に該当する
業務上横領罪の共同正犯として論ずべきものである。
しかし、同法253条は横領罪の犯人が
業務上物を占有する場合において、
とくに重い刑を科することを規定したものであるから、
業務上物の占有者たる身分のない
被告人両名に対しては同法65条2項により
同法252条1項の通常の横領罪の刑を科すべきものである。
しかるに、第一審判決は被告人両名の判示第一の所為を
単に同法253条に問擬しただけで、
何等同法60条、65条1項、2項、252条1項を
適用しなかったのは違法であり、
この違法は原判決を破棄しなければ
著しく正義に反するものと認められる
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