犯行時16歳の少年の業務上過失傷害被疑事件
(平成25年6月18日最高裁)
事件番号 平成23(あ)2032
この裁判は、 犯行時16歳の少年の業務上過失傷害被疑事件について,
検察官への事件送致までに約2年11か月を要した上,
一旦は嫌疑不十分を理由に不起訴処分(家庭裁判所へ送致しない処分)とされたため,
被疑者が成人に達して家庭裁判所で審判を受ける機会が失われたとしても,
運転者の特定に日時を要し,検察官が嫌疑不十分と判断し
不起訴処分にしたのもやむを得ないなどの事情(判文参照)がある場合には,
その後に事件を再起してした公訴提起が
無効であるとはいえないとした事例です。
最高裁判所の見解
一般に,少年の被疑事件については,捜査機関は,
少年法42条1項の趣旨を踏まえ,
適切な見通しを持った迅速な事件処理に
心掛ける必要があることはいうまでもない。
しかし,本件においては,被告人が否認する一方,
長期間にわたり被害者の供述が得られない状況が続いたこと,
鑑定等の専門的捜査が必要であったこと,
捜査の途中で目撃者の新供述を得るなどして捜査方針が
変更されたことなど,運転者を特定するまでに
日時を要する事情が存在し,当初,事件送致を受けた検察官が,
家庭裁判所へ送致せずに不起訴処分にしたのも,
被告人につき嫌疑が不十分であり,
他に審判に付すべき事由もないと判断した以上,
やむを得ないところである。
捜査等に従事した警察官及び検察官の各措置には,
家庭裁判所の審判の機会が失われることを知りながら
殊更捜査を遅らせたり,不起訴処分にしたり,
あるいは,特段の事情もなくいたずらに
事件の処理を放置したりするなどの極めて重大な
職務違反があるとは認められず,
これらの捜査等の手続に違法はない
(最高裁昭和44年(あ)第858号
同年12月5日第二小法廷判決・刑集23巻12号1583頁,
最高裁昭和44年(あ)第2037号同45年5月29日
第二小法廷判決・刑集24巻5号223頁参照)。
また,被告人が成人に達した後,
検察審査会への審査申立てを機に,
検察官が,改めて補充捜査等を行い,
被告人に嫌疑が認められると判断した上,
事件を再起してした
本件公訴提起自体にも違法とすべきところはない。
したがって,本件公訴提起が無効であるとはいえないとした
原判決は正当である。
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