米兵轢き逃げ事件(第三者の行為の介在と因果関係)
(昭和42年10月24日最高裁)
事件番号 昭和42(あ)710
在日米軍兵士Xが運転免許停止中にもかかわらず、
友人Yの車でYを助手席に乗せて、
車を運転し、自転車を運転するAと衝突し、
Aは、ひかれた衝撃でXらの屋根の上にはね上げられて失神し、
横たわったままとなりました。
Xらは、自転車と衝突したことは認識していましたが、
車の上にAがのったことに気づかないまま逃走し、
4㎞走行した後、助手席のYがAに気づいて、
車の屋根の上からAを引きずり下ろし、
Aはアスファルト舗装された路面に叩きつけられました。
Xらは、Aの救護等を行わずに逃走し、
Aは、その後、頭部打撲に基づく、
脳くも膜下出血および脳実質内出血により、
搬送先の病院で死亡しました。
第一審は、業務上過失致死罪の成立を認め、
弁護人が因果関係の存在を争ったのに対して、
原審は、因果関係を肯定し、
弁護人が同旨の主張により上告しました。
最高裁判所の見解
本件においては、被害者の死因となった頭部の傷害が
最初の被告人の自動車との衝突の際に生じたものか、
同乗者が被害者を自動車の屋根から
引きずり降ろし路上に転落させた際に生じたものか
確定しがたいというのであって、このような場合に
被告人の前記過失行為から被害者の前記死の結果の発生することが、
われわれの経験則上
当然予想しえられるところであるとは到底いえない。
したがって、原判決が右のような判断のもとに
被告人の業務上過失致死の罪責を肯定したのは、
刑法上の因果関係の判断をあやまった結果、
法令の適用をあやまったものというべきである。
この判例のポイント
因果関係の判断において、
学説では相当因果関係説が通説とされていたところ、
判例は、基本的に条件説の立場をとってきましたが、
本決定は、最高裁判所が、因果関係の判断において、
通説に近い相当因果関係の立場から
因果関係を否定する判断を示した唯一の判例です。
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