刑訴法60条1項の解釈適用
(平成27年10月22日最高裁)
事件番号 平成27(し)597
この裁判は、
業務上横領被疑事件において勾留請求を却下した
原々裁判を取り消して勾留を認めた原決定に
刑訴法60条1項の解釈適用を誤った違法があるとされた事例です。
最高裁判所の見解
本件において,原々審が,勾留の理由があることを前提に
勾留の必要性を否定したのは,罪証隠滅・逃亡の
現実的可能性の程度が高いとはいえないと判断し,また,
犯行が行われたとされている時点あるいは告発時から
かなりの年月が経過しており,被疑者は
警察からの任意の出頭要請には応じて一定程度の
事実関係は認めるという態度をとっているなどの事情があること,さらに,
原決定の前記(2)の説示に係る事情は勾留の必要性を
大きく高める事情とはいえないこと等を考慮したものと考えられる。
本件は,被害額300万円の業務上横領という相応の犯情の重さを
有する事案ではあるものの,平成20年11月に起きた事件であり,
平成23年6月に大阪家庭裁判所から大阪府警察本部に告発がされ,
長期間にわたり身柄拘束のないまま捜査が続けられていること,
本件前の相当額の余罪部分につき公訴時効の完成が迫っていたにもかかわらず,
被疑者は警察からの任意の出頭要請に応じるなどしていたこと,
被疑者の身上関係等からすると,
本件が罪証隠滅・逃亡の現実的可能性の程度が
高い事案であるとは認められない。
原決定は,捜査の遅延により
本件の公訴時効の完成が迫ったことなどを理由に,
勾留の必要性がないとまではいえない旨説示した上,
原々審の裁判を取り消したが,この説示を踏まえても,
勾留の必要性を認めなかった原々審の判断が
不合理であるとしてこれを覆すに足りる理由があるとはいえず,
原決定の結論を是認することはできない。
以上のとおり,原決定には,
刑訴法60条1項の解釈適用を誤った違法があり,
これが決定に影響を及ぼし,原決定を取り消さなければ
著しく正義に反するものと認められる。
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