固定資産税の納税義務の有無

(平成26年9月25日最高裁)

事件番号  平成25(行ヒ)35

 

この裁判では、

土地又は家屋につき賦課期日の時点において登記簿又は

補充課税台帳に登記又は登録がされていない場合における,

賦課決定処分時までに賦課期日現在の所有者として

登記又は登録されている者の固定資産税の納税義務の有無について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 固定資産税は,土地,家屋及び償却資産の資産価値に着目し,

その所有という事実に担税力を認めて課する

一種の財産税であるところ,法は,その納税義務者を

固定資産の所有者とすることを基本としており(343条1項),

その要件の充足の有無を判定する基準時としての

賦課期日を当該年度の初日の属する年の1月1日としている(359条)ので,

上記の固定資産の所有者は当該年度の

賦課期日現在の所有者を指すこととなる。

 

他方,土地,家屋及び償却資産という極めて

大量に存在する課税物件について,

市町村等がその真の所有者を逐一正確に把握することは

事実上困難であるため,法は,課税上の技術的考慮から,

土地又は家屋については,登記簿又は土地補充課税台帳若しくは

家屋補充課税台帳(以下,両台帳を併せて

単に「補充課税台帳」という。)に

所有者として登記又は登録されている者を

固定資産税の納税義務者として,

その者に課税する方式を採用しており(343条2項前段),

真の所有者がこれと異なる場合における両者の間の関係は

私法上の求償等に委ねられているものと解される

(最高裁昭和46年(オ)第766号同47年1月25日

第三小法廷判決・民集26巻1号1頁参照)。

 

このように,法は,固定資産税の納税義務の帰属につき,

固定資産の所有という概念を基礎とした上で(343条1項),

これを確定するための課税技術上の規律として,

登記簿又は補充課税台帳に所有者として登記又は登録されている者が

固定資産税の納税義務を負うものと定める(同条2項前段)

 

一方で,その登記又は登録がされるべき時期につき

特に定めを置いていないことからすれば,

その登記又は登録は,賦課期日の時点において

具備されていることを要するものではないと解される。

 

そして,賦課期日の時点において未登記かつ未登録の土地若しくは

家屋又は未登録の償却資産に関して,法は,

当該賦課期日に係る年度中に所有者が固定資産税の

納税義務を負う不足税額の存在を前提とする定めを置いており(368条),

また,賦課期日の時点において未登記の土地又は

家屋につき賦課期日後に補充課税台帳に登録して

当該年度の固定資産税を賦課し

(341条11号,13号,381条2項,4項),

賦課期日の時点において未登録の償却資産につき

賦課期日後に償却資産課税台帳に登録して

当該年度の固定資産税を賦課する(381条5項,383条)ことを

制度の仕組みとして予定していると解されること等を踏まえると,

土地又は家屋に係る固定資産税の納税義務の帰属を確定する登記又は

登録がされるべき時期について上記のように解することは,

関連する法の諸規定や諸制度との

整合性の観点からも相当であるということができる。

 

以上によれば,土地又は家屋につき,

賦課期日の時点において登記簿又は補充課税台帳に

登記又は登録がされていない場合において,

賦課決定処分時までに賦課期日現在の所有者として

登記又は登録されている者は,

当該賦課期日に係る年度における

固定資産税の納税義務を負うものと解するのが相当である。

 

なお,土地又は家屋について,

賦課期日の時点において登記簿又は

補充課税台帳に登記又は登録がされている場合には,

これにより所有者として登記又は登録された者は,

賦課期日の時点における真の所有者でなくても,また,

賦課期日後賦課決定処分時までに

その所有権を他に移転したとしても,

当該賦課期日に係る年度における固定資産税の

納税義務を負うものであるが(最高裁昭和28年(オ)第616号

同30年3月23日大法廷判決・民集9巻3号336頁,

前掲最高裁昭和47年1月25日第三小法廷判決参照),

このことは,賦課期日の時点において登記簿又は

補充課税台帳に登記又は登録がされていない場合に,

賦課決定処分時までに賦課期日現在の所有者として登記又は

登録されている者が上記のとおり当該年度の

固定資産税の納税義務を負うことと何ら抵触するものではない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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