弁護士法25条1号

 (平成29年10月5日最高裁)

事件番号  平成29(許)6

 

この裁判では、

破産管財人を原告とする訴訟において,

破産者の依頼を承諾したことのある弁護士が被告の訴訟代理人として

訴訟行為を行うことが,弁護士法25条1号に違反するかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

弁護士法25条1号は,先に弁護士を信頼して協議又は

依頼をした当事者の利益を保護するとともに,

弁護士の職務執行の公正を確保し,弁護士の品位を保持することを

目的とするものであるところ,同号に違反する訴訟行為については,

相手方である当事者は,これに異議を述べ,

裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解される

(最高裁昭和35年(オ)第924号同38年10月30日大法廷判決・

民集17巻9号1266頁参照)。

 

また,同号に違反して訴訟代理人となった弁護士から

委任を受けた訴訟復代理人の訴訟行為についても,

相手方である当事者は,同様に,訴訟復代理人の選任が

同号に違反することを理由として,これに異議を述べ,

裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解される。

 

そして,上記のとおり,同号が当事者の利益の

保護をも目的としていることからすると,

相手方である当事者は,裁判所に対し,

同号に違反することを理由として,

上記各訴訟行為を排除する旨の裁判を

求める申立権を有するものと解すべきである。

 

次に,当事者は,その訴訟代理人及び訴訟復代理人の

訴訟行為が排除されるか否かについて

利害関係を有することは明らかであるから,

同号に違反することを理由として自らの訴訟代理人又は

訴訟復代理人の訴訟行為を排除する旨の決定に対する

不服申立ての機会を与えられるべきである。

 

他方で,上記決定については,訴訟の迅速な進行を図るため,

その判断内容を早期に確定する必要性が認められる。

 

このことは,訴訟手続からの排除という点で

類似する除斥又は忌避を理由がないとする決定についても同様であり,

この決定に対する不服申立ては即時抗告に

よるものとされている(民訴法25条5項)。

 

以上の点に照らすと,弁護士法25条1号に違反することを理由として

訴訟行為を排除する旨の決定に対しては,自らの訴訟代理人又は

訴訟復代理人の訴訟行為を排除するものとされた当事者は,

民訴法25条5項の類推適用により,

即時抗告をすることができるものと解するのが相当である。

 

これに対し,上記決定において訴訟行為を

排除するものとされた訴訟代理人又は訴訟復代理人は,

当事者を代理して訴訟行為をしているにすぎず,

訴訟行為が排除されるか否かについて

固有の利害関係を有するものではないと解される。

 

したがって,上記決定に対しては,

上記訴訟代理人又は訴訟復代理人は,

自らを抗告人とする即時抗告をすることはできないものと

解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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