戸籍法104条
(平成29年5月17日最高裁)
事件番号 平成28(許)49
この裁判は、
戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出について
同条3項にいう「責めに帰することができない事由」があるとした
原審の判断に違法があるとされた事例です。
最高裁判所の見解
国籍法は,子の出生時において父又は母が
日本国籍を有することをもって,
一般的にみて我が国との密接な結び付きがあるものとして
当該子に日本国籍を付与することとした上,
国外で出生して日本国籍との重国籍となるべき子に関し,
例えば,その生活の基盤が永続的に外国に置かれることになるなど,
必ずしも我が国との密接な結び付きが
あるとはいえない場合があり得ることを踏まえ,
実体を伴わない形骸化した日本国籍の発生をできる限り防止するとともに,
内国秩序等の観点からの弊害が指摘されている
重国籍の発生をできる限り回避することを目的として,
国籍留保制度を設けたものと解される
(最高裁平成25年(行ツ)第230号同27年3月10日
第三小法廷判決・民集69巻2号265頁参照)。
これを受けた戸籍法104条1項は,
子の法的地位の安定の観点から生来的な国籍の取得の有無ができる限り
子の出生時に確定的に決定されることが望ましく,また,
出生の届出をすべき父母等による国籍留保の意思表示をもって
当該子に係る我が国との密接な結び付きの徴表とみることができることから,
国籍留保の意思表示は,出生の届出をすることができる者が,
原則として子の出生の日から3箇月以内に国籍留保の届出に
よってしなければならないとしたものと解される。
そして,同条3項は,上記の届出期間について
例外を認めるものであるところ,
上記の国籍留保制度等の趣旨及び目的に加え,
同項が「天災」を挙げていることに照らせば,
同項にいう「責めに帰することができない事由」の存否は,
客観的にみて国籍留保の届出をすることの障害となる事情の有無や
その程度を勘案して判断するのが相当である。
本件においては,相手方4名について,戸籍に記載されておらず,
本籍及び戸籍上の氏名がないという事情だけでは,
客観的にみて本件子らに係る国籍留保の届出をすることの
障害とならないことは明らかであって,
これによって相手方4名が戸籍法104条1項の
届出期間内に本件子らに係る出生の届出や
国籍留保の届出をすることができなかったとはいえない。
したがって,上記の事情のみをもって同条3項にいう
「責めに帰することができない事由」があるとした原審の判断には,
裁判に影響を及ぼすことが
明らかな法令の違反があるというべきである。
そして,その他に本件各国籍留保の届出について
戸籍法104条3項を適用して受理すべき事情はうかがわれないから,
本件各国籍留保の届出は,同条1項及び3項の定める
届出期間を経過してされたものというべきであり,また,
その余の本件各届出は,本件子らが国籍法12条により
日本国籍を失っているため,
戸籍法の適用がない者に係るものであるから,
本件各届出は,いずれも不受理とするのが相当である。
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