破産法104条

(平成29年9月12日最高裁)

事件番号  平成29(許)3

 

この裁判では、

 破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から

債権の一部の弁済を受けた場合における,

破産手続開始時の債権の額を基礎として計算された配当額のうち

実体法上の残債権額を超過する部分の配当方法について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

同一の給付について複数の者が各自全部の履行をする

義務を負う場合(以下,全部の履行をする義務を負う者を

「全部義務者」という。)について,

破産法104条1項及び2項は,全部義務者の破産手続開始後に

他の全部義務者が弁済等をしたときであっても,

破産手続上は,その弁済等により債権の全額が消滅しない限り,

当該債権が破産手続開始の時における額で現存しているものとみて,

債権者がその権利を行使することができる旨を定め,

この債権額を基準に債権者に対する配当額を

算定することとしたものである。

 

すなわち,破産法104条1項及び2項は,

複数の全部義務者を設けることが責任財産を集積して

当該債権の目的である給付の実現をより

確実にするという機能を有することに鑑みて,

配当額の計算の基礎となる債権額と実体法上の

債権額とのかい離を認めるものであり,

その結果として,債権者が実体法上の債権額を

超過する額の配当を受けるという事態が生じ得ることを

許容しているものと解される(なお,そのような配当を受けた債権者が,

債権の一部を弁済した求償権者に対し,

不当利得として超過部分相当額を

返還すべき義務を負うことは別論である。)。

 

他方,破産法104条3項ただし書によれば,

債権者が破産手続開始の時において有する

債権について破産手続に参加したときは,

求償権者は当該破産手続に参加することができないのであるから,

債権の一部を弁済した求償権者が,当該債権について

超過部分が生ずる場合に配当の手続に参加する趣旨で

予備的にその求償権を破産債権として

届け出ることはできないものと解される。

 

また,破産法104条4項によれば,

債権者が配当を受けて初めて債権の全額が消滅する場合,

求償権者は,当該配当の段階においては,

債権者が有した権利を破産債権者として

行使することができないものと解される。

 

そして,破産法104条5項は,

物上保証人が債務者の破産手続開始後に債権者に対して

弁済等をした場合について同条2項を,

破産者に対して求償権を有する

物上保証人について同条3項及び4項を,

それぞれ準用しているから,物上保証人が

債権の一部を弁済した場合についても全部義務者の場合と

同様に解するのが相当である。

 

したがって,破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から

債権の一部の弁済を受けた場合において,

破産手続開始の時における債権の額として確定したものを基礎として

計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは,

その超過する部分は当該債権について配当すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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