競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法上の扱い
(平成27年3月10日最高裁)
事件番号 平成26(あ)948
この裁判は、
競馬の当たり馬券の払戻金が所得税法上の
一時所得ではなく雑所得に当たるとされた事例です。
最高裁判所の見解
所得税法34条1項は,一時所得について,
「一時所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,
給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち,
営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で
労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての
性質を有しないものをいう。」と規定している。
そして,同法35条1項は,雑所得について,
「雑所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,
事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び
一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」と規定している。
したがって,所得税法上,営利を目的とする継続的行為から生じた所得は,
一時所得ではなく雑所得に区分されるところ,
営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,
文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,
期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。
これに対し,検察官は,営利を目的とする継続的行為から
生じた所得であるか否かは,所得や行為の本来の性質を本質的な考慮要素として
判断すべきであり,当たり馬券の払戻金が本来は一時的,
偶発的な所得であるという性質を有することや,
馬券の購入行為が本来は社会通念上一定の所得をもたらすものとは
いえない賭博の性質を有することからすると,
購入の態様に関する事情にかかわらず,当たり馬券の払戻金は
一時所得である,また,購入の態様に関する事情を考慮して
判断しなければならないとすると課税事務に困難が生じる旨主張する。
しかしながら,所得税法の沿革を見ても,
およそ営利を目的とする継続的行為から生じた所得に関し,
所得や行為の本来の性質を本質的な考慮要素として
判断すべきであるという解釈がされていたとは認められない上,
いずれの所得区分に該当するかを判断するに当たっては,
所得の種類に応じた課税を定めている所得税法の趣旨,目的に照らし,
所得及びそれを生じた行為の具体的な態様も考察すべきであるから,
当たり馬券の払戻金の本来的な性質が一時的,偶発的な所得であるとの
一事から営利を目的とする継続的行為から生じた所得には
当たらないと解釈すべきではない。
また,画一的な課税事務の便宜等をもって
一時所得に当たるか雑所得に当たるかを決するのは相当でない。
よって,検察官の主張は採用できない。
以上によれば,被告人が馬券を自動的に購入するソフトを使用して
独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して
長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない
網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより
多額の利益を恒常的に上げ,一連の馬券の購入が
一体の経済活動の実態を有するといえるなどの本件事実関係の下では,
払戻金は営利を目的とする継続的行為から生じた所得として
所得税法上の一時所得ではなく雑所得に当たるとした原判断は正当である。
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