ネスレ日本・日高乳業事件

平成7年2月23日最高裁

事件番号  平成4(行ツ)120

 

X1社とX2社とは、別法人ですが、

両社は業務提携をして、X2はX1の製品を製造し、

X2の正社員の従業員は、すべてX1により採用されて

X1から出向した従業員という関係でした。

(極めて少数の臨時社員もいました。)

 

X2の設立時に、

X2とX1会社の労働組合(A労働組合)とは

X1とA労組との間で決定した労働条件を

X2会社B工場に適用するとの合意がされ、

B工場での労働条件は、A労組とX1との交渉により決定されていました。

 

X2内部での人事異動は、その工場長によって決定されていましたが、

その工場長の地位はX1からの出向者により

占められるのが当然とされており、B工場においてはX1と人事的に

きわめて密接な交流が図られていました。

 

その後、A組合は分裂し、

新たにC組合、D組合が併存する形になり、

X2B工場においても、C組合B支部、D組合B支部が

併存する形となりました。

 

C組合B支部は、X2会社がD組合B支部しか組合と認めず、

団体交渉を拒否したことや、組合員の組合費を控除したこと、

脱退勧奨があったことを不当労働行為であるとして、

Y労働委員会に救済申し立てをしたところ、

 

Y労働委員会は、X2に対して、

チェック・オフ禁止、すでに控除した組合費及びそれに対する

利息の支払等の不当労働行為救済命令を出しました。

 

しかし、C労働組合B支部からは、最後に残っていた3名の組合員が脱退し、

組合員が1人もいなくなり、さらに

X2会社がそのB工場の営業施設を第三者に譲渡したことにより、

B工場においてX1会社の労働組合の組合員が

労務に従事する可能性が当面失われたため、自然消滅しました。

 

X1及びX2は、Y労働委員会による

不当労働行為救済命令の取消しを求めて裁判を起こしました。

 

一審、原審は請求を棄却し、

X1及びX2が上告しました。

 

最高裁判所の見解

救済命令で使用者に対し労働組合への金員の支払が命ぜられた場合において、

その支払を受けるべき労働組合が自然消滅するなどして

労働組合としての活動をする団体としては存続しないこととなったときは、

使用者に対する右救済命令の拘束力は失われたものというべきであり、

このことは、右労働組合の法人格が清算法人として存続していても同様である。

 

けだし、使用者に対し労働組合への金員の支払を命ずる救済命令は、

その支払をさせることにより、

不当労働行為によって生じた侵害状態を是正し、

不当労働行為がなかったと同様の状態を

回復しようとするものであるところ、

その労働組合が組合活動をする団体としては

存続しなくなっている以上、清算法人として存続している労働組合に対し、

使用者にその支払を履行させても、もはや侵害状態が是正される余地はなく、

その履行は救済の手段方法としての意味を失ったというべきであるし、また、

これを救済命令の履行の相手方の存否という観点からみても、

右のような救済命令は、使用者に国に対する公法上の義務を負担させるものであって、

これに対応した使用者に対する請求権を労働組合に取得させるものではないのであるから、

右支払を受けることが清算の目的の範囲に属するということはできず、

組合活動をする団体ではなくなった清算法人である労働組合は、

もはやこれを受ける適格を失っているといわなければならないからである。

 

これを本件についてみると、

組合員が一人もいなくなったことなどによりC労働組合B支部が自然消滅したことは、

原審の適法に確定するところであるから、

上告人に対し控除組合費相当額等のC労働組合B支部への支払を命じた

本件救済命令の前記部分は、

既にその拘束力が失われているものというべきである。

 

そうすると、上告人がその取消しを求める

法律上の利益は失われたというべきであって、

右部分の取消しを求める訴えは却下すべきこととなる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

労働法判例の要点をわかりやすく解説コーナートップへ


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事