三共自動車事件(労災保険給付と民事損害賠償)

(昭和52年10月25日最高裁)事件番号  昭和50(オ)621

 

特殊自動車等の分解整備を業とするY社に

整備工として雇用されていたX(当時20歳)は、

Y社の工場において作業中、ワイヤーロープに吊り下げられていた

バケット(重さ約1,500キロ)がワイヤーロープの切断により、

頭上に落下し、その下敷きとなって、脳挫傷、頸骨骨折等の重症を負い、

労働能力を喪失することとなりました。

 

Xは民法717条及び715条に基づき

Yに対し逸失利益や慰謝料を求めて訴えを提起しました。

 

一審、原審ともにXの損害賠償請求を一部認容しました。

 

原審は、損害については、労災保険から支給を受けた

休業補償給付金と長期傷病補償給付金、厚生年金保険から支給を受けた

障害年金を逸失利益から控除するだけでなく、

将来において給付される長期傷病補償給付金および障害年金についても

現在価値を算出したうえ、逸失利益から控除しました。

Xはこれを不服として上告しました。

 

最高裁判所の見解

労働者災害補償保険法に基づく保険給付の実質は、

使用者の労働基準法上の災害補償義務を政府が保険給付の形式で行うものであって、

厚生年金保険法に基づく保険給付と同様、受給権者に対する損害の填補の性質をも有するから、

事故が使用者の行為によって生じた場合において、

受給権者に対し、政府が労働者災害補償保険法に基づく

保険給付をしたときは労働基準法84条2項の規定を類推適用し、また、

政府が厚生年金保険法に基づく保険給付をしたときは衡平の理念に照らし、

使用者は、同一の事由については、

その価額の限度において民法による損害賠償の責を免れると解するのが、相当である。

 

右のように政府が保険給付をしたことによって、

受給権者の使用者に対する損害賠償請求権が失われるのは、

右保険給付が損害の填補の性質をも有する以上、

政府が現実に保険金を給付して損害を填補したときに限られ、

いまだ現実の給付がない以上、たとえ将来にわたり継続して

給付されることが確定していても、

受給権者は使用者に対し損害賠償の請求をするにあたり、

このような将来の給付額を損害賠償債権額から控除することを要しない

と解するのが、相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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