丸島水門製作所事件(使用者のロックアウト)
(昭和50年4月25日最高裁)
事件番号 昭和44(オ)1256
この裁判では、使用者の争議行為(ロックアウト)の正当性について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
争議権を認めた法の趣旨が争議行為の一般市民法による制約からの解放にあり、
労働者の争議権について特に明文化した理由が専ら
これによる労使対等の促進と確保の必要に出たもので、
窮極的には公平の原則に立脚するものであるとすれば、
力関係において優位に立つ使用者に対して、
一般的に労働者に対すると同様な意味において
争議権を認めるべき理由はなく、また、その必要もないけれども、
そうであるからといって、使用者に対し一切争議権を否定し、
使用者は労働争議に際し一般市民法による制約の下において
することのできる対抗措置をとりうるにすぎないとすることは相当でなく、
個々の具体的な労働争議の場において、
労働者側の争議行為によりかえって労使間の勢力の均衡が破れ、
使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、
衡平の原則に照らし、使用者側においてこのような圧力を阻止し、
労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として
相当性を認められるかぎりにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして
是認されると解すべきである。
労働者の提供する労務の受領を集団的に
拒否するいわゆるロックアウト(作業所閉鎖)は、
使用者の争議行為の一態様として行われるものであるから、
それが正当な争議行為として是認されるかどうか、
換言すれば、使用者が一般市民法による制約から離れて
右のような労務の受領拒否をすることができるかどうかも、
右に述べたところに従い、個々の具体的な労働争議における
労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、
それによって使用者側の受ける打撃の程度等に
関する具体的諸事情に照らし、
衡平の見地から見て労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として
相当と認められるかどうかによってこれを決すべく、
このような相当性を認めうる場合には、使用者は、
正当な争議行為をしたものとして、
右ロックアウト期間中における対象労働者に対する
個別的労働契約上の賃金支払義務をまぬかれるものといわなければならない。
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