労働基準法114条の付加金の請求の価額

(平成27年5月19日最高裁)

事件番号  平成26(許)36

 

この裁判では、

労働基準法114条の付加金の請求の価額は,

同条所定の未払金の請求に係る訴訟の

目的の価額に算入されるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

訴訟の目的の価額は管轄の決定や訴えの

提起等の手数料に係る算定の基準とされているところ,

民訴法9条2項は,果実,損害賠償,違約金又は費用

(以下,併せて「果実等」という。)の請求が

訴訟の附帯の目的であるときは,その価額を訴訟の目的の

価額に算入しない旨を定めている。

 

同項の規定が,金銭債権の元本に対する遅延損害金などのように

訴えの提起の際に訴訟の目的の価額を

算定することが困難な場合のみならず,

それ以外の場合を含めて果実等の請求をその適用の対象として掲げ,

これらの請求が訴訟の附帯の目的であるときは

その価額を訴訟の目的の価額に算入しないものとしているのは,

このような訴訟の附帯の目的である果実等の請求については,

その当否の審理判断がその請求権の発生の基礎となる

主たる請求の当否の審理判断を前提に同一の手続において

これに付随して行われることなどに鑑み,

その価額を別個に訴訟の目的の価額に算入することなく,

主たる請求の価額のみを管轄の決定や訴えの提起等の

手数料に係る算定の基準とすれば足りるとし,

これらの基準を簡明なものとする趣旨によるものと解される。

 

しかるところ,労働基準法114条は,

労働者に対する休業手当等の支払を義務付ける

同法26条など同法114条に掲げる同法の各規定に違反して

その義務を履行しない使用者に対し,裁判所が,

労働者の請求により,上記各規定により使用者が支払わなければならない

休業手当等の金額についての未払金に加え,

これと同一額の付加金の労働者への支払を命ずることができる旨を定めている。

 

その趣旨は,労働者の保護の観点から,

上記の休業手当等の支払義務を履行しない使用者に対し

一種の制裁として経済的な不利益を課すこととし,

その支払義務の履行を促すことにより

上記各規定の実効性を高めようとするものと解されるところ,

このことに加え,上記のとおり使用者から

労働者に対し付加金を直接支払うよう命ずべきものとされていることからすれば,

同法114条の付加金については,使用者による上記の

休業手当等の支払義務の不履行によって

労働者に生ずる損害の塡補という趣旨も

併せ有するものということができる。

 

そして,上記の付加金に係る同条の規定の内容によれば,

同条所定の未払金の請求に係る訴訟において同請求とともにされる

付加金の請求につき,その付加金の支払を命ずることの

当否の審理判断は同条所定の未払金の存否の審理判断を前提に

同一の手続においてこれに付随して行われるものであるといえるから,

上記のような付加金の制度の趣旨も踏まえると,

上記の付加金の請求についてはその価額を訴訟の

目的の価額に算入しないものとすることが前記の

民訴法9条2項の趣旨に合致するものということができる。

 

以上に鑑みると,労働基準法114条の付加金の請求については,

同条所定の未払金の請求に係る訴訟において

同請求とともにされるときは,民訴法9条2項にいう

訴訟の附帯の目的である損害賠償又は違約金の請求に含まれるものとして,

その価額は当該訴訟の目的の価額に算入されないものと

解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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