名古屋ダイハツ労組事件

(昭和49年9月30日最高裁)

事件番号  昭和44(オ)438

 

A組合に加盟していたX組合(旧組合)は、

Aの傘下を離脱しようとする多数派と

Aの傘下にとどまろうとする少数派で内部対立が生じ、

多数派が、臨時組合大会において、労働組合の規約には、

解散決議は組合大会で組合員の直接無記名投票により

採決することを要する旨規定されていたところ、

本件解散決議は、直接無記名投票の方法によることなく、

起立の方法によって採決され、賛成多数で組合の解散を決議し、

Y組合を結成し、Dを執行委員長に選任しました。

 

解散に反対した組合員は、そのままXに残留しましたが、

組合財産は、Yの執行委員長のDが管理するに至りました。

 

そこで、XはDが組合の財産を独占保有して損害を与えたとして、

解散決議の無効と損害賠償を求めて争いました。

 

最高裁判所の見解

労働組合の規約中に解散決議の採決方法につき

直接無記名投票による旨の定めがある場合において、

それ以外の採決方法によってされた組合解散決議は、

あらかじめ決議に参加する者全員が

その採決方法によることを同意していたと認められるときのほかは、

客観的にみてその採決方法によらざるをえないと

認めるに足りるだけの特段の事情が存しないかぎり、

無効であると解するのが相当である。

 

従前の労働組合の規約32条には、

解散決議は組合大会で組合員の直接無記名投票により

採決することを要する旨規定されていたところ、

本件解散決議は、直接無記名投票の方法によることなく、

起立の方法によって採決されたのであるが、

右の方法によることにつき決議参加者全員の同意をえていなかった、

というのであり、しかも、原審の確定する事実関係に照らすと、

いまだ、起立の方法によらざるをえないと認めるに足りるだけの

特段の事情があったといい難いから、

本件解散決議は無効であると解するほかなく、

これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。

 

労働組合において、その内部に相拮抗する異質集団が成立し、

その対立抗争が甚だしく、そのため、組合が統一的組織体として

存続し活動することが事実上困難となり、遂に、

ある異質集団に属する組合員が組合(以下、旧組合という。)

から集団的に離脱して新たな組合(以下、新組合という。)を結成し、

ここに新組合と旧組合の残留組合員による組合(以下、残存組合という。)とが

対峙するに至るというような事態が生じた場合には、

これを、法律上、単に旧組合からの組合員の脱退及び

それに続く新組合の設立にすぎないものであると理解し、

旧組合の財産につき、残存組合にその独占を許す

結果を認めるのは不公平であり、したがつて、新組合と残存組合の双方に

権利を肯定する組合分裂なる法理を導入すべきである、

との見解を、その立論の前提としている。

 

しかし、所論のような事態が生じたとしても、一般的には、

このことだけで、旧組合がいわば

自己分解してしまったと評価することはできず、

むしろ、旧組合は、組織的同一性を損なうことなく

残存組合として存続し、

新組合は、旧組合とは組織上全く別個の存在であると

みられるのが通常であって、

ただ、旧組合の内部対立によりその統一的な存続・活動が極めて

高度かつ永続的に困難となり、その結果旧組合員の集団的離脱及び

それに続く新組合の結成という事態が生じた場合に、はじめて、

組合の分裂という特別の法理の導入の可否につき

検討する余地を生ずるものと解されるのである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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