根岸病院事件(義務的団交事項)
(平成19年7月31日東京地裁)
X病院が、その職員で組織される唯一のA労働組合に対し、
事前に協議することなく、初任給を大幅に引下げることを通知し、
これに対して、A組合はX病院に対して、
初任給の引下げについて団体交渉を申し入れ、
3回目の団体交渉でX病院は初任給の引下げについて
B労働委員会に委ねるとし、何らの交渉も行われませんでした。
その後Bは、X病院に対して、団交命令、初任給の是正、
謝罪文の提示を命じる救済命令を発し、
XはY中央労働委員会に対して再審査を申し出たところ、
Yは、初任給額の是正を命じた部分を取り消し、
謝罪文の一部を変更し、その他の再審査申立てを棄却しました。
X病院とA組合はともに取消訴訟を提起し、
1審はX病院の請求を認容し、A組合の請求を棄却し、
A組合が控訴しました。
裁判所の見解
誠実な団体交渉が義務付けられる対象、
すなわち義務的団交事項とは、
団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員たる
労働者の労働条件その他の待遇、当該団体と使用者との間の
団体的労使関係の運営に関する事項であって、
使用者に処分可能なものと解するのが相当である。
そして、非組合員である労働者の労働条件に関する問題は、
当然には上記団交事項にあたるものではないが、
それが将来にわたり組合員の労働条件、権利等に影響を及ぼす可能性が大きく、
組合員の労働条件との関わりが強い事項については、
これを団交事項に該当しないとするのでは、組合の団体交渉力を否定する結果となるから、
これも上記団交事項にあたると解すべきである。
本件初任給引下げは、A組合の影響力を減殺し、
同組合の弱体化を図る意図で行われたものというより、
経営状況改善のための合理的な経営判断の下に
行われたものと認めるのが相当であり、
一審原告組合に対する支配介入(労働組合法7条3号) は
当たらないと認められ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
以上検討したところによれば、
本件命令が本件初任給引下げが
一審原告組合に対する支配介入に当たらない。
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