横浜南労基署長事件(旭紙業事件)(労基法上の「労働者」)
(平成8年11月28日最高裁)
平成7(行ツ)65
Xは自己の所有するトラックをA社に持ち込み、
専属的にA社の製品の運送業務に従事し、
積み込み作業中に転倒し、傷害を負いました。
Xは、Y労基署所長に対して、労災保険法に基づいて、
労災保険法所定の療養・休業補償給付を請求しましたが、
Yは、Xは同法上の「労働者」にあたらないとして、
不支給処分としました。
Xはこの不支給処分の取消しを求めて、
訴えを提起し、一審はXの請求を認容しましたが、
原審は一審を取消し、Xの請求を棄却し、Xが上告しました。
最高裁判所の見解
Xは、業務用機材であるトラックを所有し、
自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、
Y社は、運送という業務の性質上当然に必要とされる
運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、
Xの業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、
時間的、場所的な拘束の程度も、
一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、
XがY社の指揮監督の下で労務を提供していたと
評価するには足りないものといわざるを得ない。
そして、報酬の支払方法、公租公課の負担等についてみても、
上告人が労働基準法上の労働者に該当すると
解するのを相当とする事情はない。
そうであれば、Xは、専属的にY社の製品の運送業務に携わっており、
同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、
毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって
事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、
トラック協会が定める運賃表による運送料よりも
一割五分低い額とされていたことなど原審が適法に
確定したその余の事実関係を考慮しても、
Xは、労働基準法上の労働者ということはできず、
労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。
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