福島県教組事件
(昭和44年12月18日最高裁)
事件番号 昭和40(行ツ)92
県立高等学校の教職員であるXらは、昭和33年9月5日から15日までの間、
成績評価の仕組みを導入することに反対し、全日または一定時間勤務しませんでした。
県は、本来であれば、勤務しなかった時間分の
給料の減額、勤勉手当の減額をすべきであったところ、
事務が間に合わなかったため、給料の減額、勤勉手当の全額を支払い、
過払いの状態になりました。
そこで、県は、Xらにこの過払い金の返納を求め、
その求めに応じない時は、翌月分の給与から過払い額を
減額する旨を通知しました。
Xらは、過払い金の返納に応じなかったため、
県は、2月分と3月分の給与から、過払い分を控除しました。
Xらは、このような控除は
労働基準法24条1項の賃金全額払いの原則
に違反しているとし訴えを提起しました。
(なお、昭和40年の法改正で、地公法25条2項で
全額払いの原則が定められ、労基法24条1項は適用除外となっています。)
最高裁判所の見解
賃金支払事務においては、一定期間の賃金がその期間の満了前に
支払われることとされている場合には、
支払日後、期間満了前に減額事由が生じたときまたは、
減額事由が賃金の支払日に接着して生じたこと等による
やむをえない減額不能または計算未了となることがあり、
あるいは賃金計算における過誤、違算等により、
賃金の過払が生ずることのあることは避けがたいところであり、
このような場合、これを精算ないし調整するため、
後に支払わるべき賃金から控除できるとすることは、
右のような賃金支払事務における実情に徴し
合理的理由があるといいうるのみならず、
労働者にとっても、このような控除をしても、
賃金と関係のない他の債権を自働債権とする相殺の場合とは
趣を異にし、実質的にみれば、本来支払わるべき賃金は、
その全額の支払を受けた結果となるのである。
このような事情と前記24条1項の法意とを併せ考えれば、
適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、
同項但書によって除外される場合にあたらなくても、
その行使の時期、方法、金額等からみて
労働者の経済生活の安定との関係上不当と
認められないものであれば、
同項の禁止するところではないと解するのが相当である。
この見地からすれば、許さるべき相殺は、
過払のあった時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に
合理的に接着した時期においてされ、また、
あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、
その額が多額にわたらないとか、
要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならないものと解せられる。
・行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本
スポンサードリンク
関連記事