住基ネットとプライバシー
(平成20年3月6日最高裁)
事件番号 平成19(オ)403
住民基本台帳法の住基ネットによる
個人情報の管理・利用等は
プライバシー権を侵害するとして、
Xは住民基本台帳を保管する市に対し、
Xの住民票コードの削除を求めました。
最高裁判所の見解
住基ネットによって管理、利用等される本人確認情報は,
氏名,生年月日,性別及び住所から成る4情報に、
住民票コード及び変更情報を加えたものにすぎない。
このうち4情報は、人が社会生活を営む上で
一定の範囲の他者には
当然開示されることが予定されている個人識別情報であり、
変更情報も、転入、転出等の異動事由、異動年月日及び
異動前の本人確認情報にとどまるもので、これらはいずれも、
個人の内面に関わるような秘匿性の高い情報とはいえない。
これらの情報は、住基ネットが導入される以前から,
住民票の記載事項として、
住民基本台帳を保管する各市町村において
管理,利用等されるとともに、
法令に基づき必要に応じて
他の行政機関等に提供され、
その事務処理に利用されてきたものである。
そして,住民票コードは、住基ネットによる
本人確認情報の管理、利用等を目的として、
都道府県知事が無作為に指定した数列の中から
市町村長が一を選んで各人に割り当てたものであるから、
上記目的に利用される限りにおいては、
その秘匿性の程度は本人確認情報と異なるものではない。
また,前記確定事実によれば、住基ネットによる
本人確認情報の管理、利用等は、法令等の根拠に基づき、
住民サービスの向上及び行政事務の効率化という
正当な行政目的の範囲内で
行われているものということができる。
住基ネットのシステム上の欠陥等により外部から
不当にアクセスされるなどして
本人確認情報が容易に漏えいする
具体的な危険はないこと、受領者による本人確認情報の
目的外利用又は本人確認情報に関する秘密の漏えい等は、
懲戒処分又は刑罰をもって禁止されていること、住基法は、
都道府県に本人確認情報の保護に関する審議会を、
指定情報処理機関に
本人確認情報保護委員会を設置することとして、
本人確認情報の適切な取扱いを担保するための
制度的措置を講じていることなどに照らせば、
住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり、
そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに又は
正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示又は
公表される具体的な危険が生じているということもできない。
行政機関が住基ネットにより住民である
被上告人らの本人確認情報を管理、利用等する行為は、
個人に関する情報をみだりに
第三者に開示又は公表するものということはできず、
当該個人がこれに同意していないとしても、
憲法13条により保障された
上記の自由を侵害するものではないと
解するのが相当。
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