在外財産の喪失と国の損失補償
(昭和43年11月27日最高裁)
事件番号 昭和37(あ)2922
1928年(昭和3年)からカナダに移住し、
1943年(昭和18年)に日本に帰国したXらは、
帰国当時の財産がカナダ政府により敵産管理措置を受け、
戦後、対日平和条約第14条による処分で、
Xらの財産の返還請求は不能となりました。
これに対してXらは、
日本政府が連合国に対して負担する
損害賠償債義務履行のため、
国民の私有財産を充当したものであり、
憲法29条3項の公用収用にあたり、
日本政府は当該財産について補償すべき義務を負うとして
本件財産を日本円に換算した金額の補償を求め出訴しました。
最高裁判所の見解
戦争中から戦後占領時代にかけての
国の存亡にかかわる非常事態にあっては、
国民のすべてが、多かれ少なかれ、
その生命・身体・財産の犠牲を堪え忍ぶべく
余儀なくされていたのであって、これらの犠牲は、
いずれも、戦争犠牲または戦争損害として、
国民のひとしく受忍しなければならなかったところであり、
右の在外資産の賠償への充当による損害のごとさも、
一種の戦争損害として、これに対する補償は、
憲法の全く予想しないところというべきである。
在外資産の喪失による損害に対し、国が、
政策的に何らかの配慮をするかどうかは別問題として、
憲法29条3項を適用してその補償を求める所論主張は、
その前提を欠くに帰するものであって、
所論の憲法29条3項の意義・性質等について判断するまでもない。
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