学生無年金障害者訴訟(最判平成19年9月28日)

事件番号  平成17(行ツ)246

 

Xは大学在学中の傷病により障害を負い、

障害基礎年金の支給裁定を申請しました。

 

平成元年改正前の法の下においては、

20歳以上の学生は、国民年金に任意加入して

保険料を納付していない限り、

傷病により障害の状態にあることとなっても、

初診日において国民年金の被保険者でないため

障害基礎年金等の支給を受けることが

できないとされていました。

 

Xは、国民年金に任意加入しておらず、

被保険者資格が認められないとして、

不支給処分とされました。

 

Xはこれに対して、

処分の取り消しと国賠訴訟を求めました。

 

最高裁判所の見解

Xは、平成元年改正前の法の下においては、

20歳以上の学生を強制適用対象から除外し、

保険料納付義務の免除を受けられない任意加入を認めるにとどまったため、

20歳以上の学生とそれ以外の者に、

加入の区別による受給の差異が生じていた点が

憲法に違反すると主張しましたが、

裁判所は、

「国民年金制度は、憲法25条の趣旨を実現するために

設けられた社会保障上の制度であるところ、

同条の趣旨にこたえて具体的に

どのような立法措置を講じるかの選択決定は、

立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく

合理性を欠き明らかに裁量の逸脱、

濫用とみざるを得ないような場合を除き、

裁判所が審査判断するのに適しない

事柄であるといわなければならない。

 

もっとも、同条の趣旨にこたえて制定された法令において

受給権者の範囲、支給要件等につき何ら合理的理由のない

不当な差別的取扱いをするときは

別に憲法14条違反の問題を生じ得ることは

否定し得ないところである。

 

平成元年改正前の法が、

20歳以上の学生の保険料負担能力、

国民年金に加入する必要性ないし実益の程度、加入に伴い

学生及び学生の属する世帯の世帯主等が

負うこととなる経済的な負担等を考慮し、

保険方式を基本とする国民年金制度の趣旨を踏まえて、

20歳以上の学生を国民年金の強制加入被保険者として

一律に保険料納付義務を課すのではなく、

任意加入を認めて国民年金に加入するかどうかを

20歳以上の学生の意思にゆだねることとした措置は、

著しく合理性を欠くということはできず、

加入等に関する区別が何ら合理的理由のない

不当な差別的取扱いであるということもできない

 

平成元年改正前の法における強制加入例外規定を含む

20歳以上の学生に関する上記の措置及び

加入等に関する区別並びに

立法府が平成元年改正前において20歳以上の学生について

国民年金の強制加入被保険者とするなどの

所論の措置を講じなかったことは、

憲法25条、14条1項に違反しない。」

としました。

 

20歳前に障害者を負った場合との差異について

国民年金法は、20歳未満で障害を負った者に

無拠出制の障害基礎年金を支給する旨を定めていましたが、

Xは任意加入しない20歳以上学生に

受給資格のない差異についても

憲法に反すると主張しましたが、

裁判所は、

「20歳前障害者は、傷病により障害の状態にあることとなり

稼得能力、保険料負担能力が失われ又は著しく低下する前は、

20歳未満であったため任意加入も含めおよそ

国民年金の被保険者となることのできない地位にあったのに対し、

初診日において20歳以上の学生である者は、

傷病により障害の状態にあることとなる前に任意加入によって

国民年金の被保険者となる機会を付与されていたものである。」

として、憲法に違反しないとしました。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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