法廷のイラスト画、報道と肖像権
和歌山カレーライス毒物混入事件の被告人Xは、
法廷での姿を隠し撮りされました。
(写真週刊誌のカメラマンが隠して持ち込んだ小型カメラで、
閉廷直後の時間帯に、裁判所の許可を得ることなく、かつ、
被上告人に無断で、裁判所職員及び訴訟関係人に
気付かれないようにして、撮影されました)
Xはその事について、
肖像権侵害を理由に、編集長、出版社に対して
慰謝料等の支払いを求める訴えを起こしました。
その後、同写真週刊誌は、Xのイラスト画三点と
Xを揶揄するような表現の文章を掲載し、
Xはさらに出版社等に肖像権侵害等を理由に、
慰謝料等の支払いを求める訴えを起こしました。
裁判所は、
「人はみだりに自己の容ぼう、姿態を
撮影されないということについて
法律上保護されるべき人格的利益を有し、ある者の容ぼう、姿態を
その承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、
被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、
撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を
総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が
社会生活上受忍すべき限度を
超えるものといえるかどうかを判断して決すべき」
として、
「写真週刊誌のカメラマンが、
刑事事件の被疑者の動静を報道する目的で、
勾留理由開示手続が行われた法廷において
同人の容ぼう、姿態をその承諾なく撮影した行為は、
手錠をされ、腰縄を付けられた状態の
同人の容ぼう、姿態を、裁判所の許可を受けることなく
隠し撮りしたものであることなど判示の事情の下においては、
不法行為法上違法である。」
としました。
また、
「人は自己の容ぼう、姿態を描写したイラスト画について
みだりに公表されない人格的利益を有するが、
上記イラスト画を公表する行為が社会生活上受忍の限度を超えて
不法行為法上違法と評価されるか否かの判断に当たっては、
イラスト画はその描写に作者の主観や技術を反映するものであり、
公表された場合も、これを前提とした受け取り方をされるという特質が
参酌されなければならない。」
として
「刑事事件の被告人について、法廷において訴訟関係人から
資料を見せられている状態及び
手振りを交えて話しているような状態の
容ぼう、姿態を描いたイラスト画を
写真週刊誌に掲載して公表した行為は、
不法行為法上違法であるとはいえない。」
としましたが、
「刑事事件の被告人について、法廷において
手錠、腰縄により身体の拘束を受けている状態の
容ぼう、姿態を描いたイラスト画を写真週刊誌に掲載して
公表した行為は、不法行為法上違法である。」
としました。
(なお、本判決は、
「自己の容ぼうをみだりに公表されない人格的利益」
について言及していますが、
それを「肖像権」として言及はしてはいません。)
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