生産管理・山田鋼業事件(争議権の限界)

(昭和25年11月15日最高裁) 

事件番号  昭和23(れ)1049

 

山田鋼業合名会社は、事業縮小による整理を理由に

従業員の解雇を通告しました。

 

組合は、労働協約締結の交渉後、

生産管理に入りました。

(生産管理とは、争議行為の一環として、

労働者が使用者の経営支配を排除し、

工場・事業所全体やその生産設備等を接収して

経営を行うことをいいます。)

 

組合幹部のXらは、

設備の復旧や資金等の必要な資金を得る目的で、

会社所有の鉄板を2回ほど拠出したため、

業務上横領罪で起訴されました。

 

本件生産管理が争議権として認められ、

Xらの行為の違法性が阻却されるのか、

あるいは、争議権の濫用となるのかが注目されました。

 

最高裁判所の見解

憲法は勤労者に対して団結権、団体交渉権

その他の団体行動権を保障すると共に、

すべての国民に対して平等権、自由権、財産権等の

基本的人権を保障しているのであって、

是等諸々の基本的人権が労働者の争議権の無制限な行使の前に

ことごとく排除されることを認めているのでもなく、

後者が前者に対して絶対的優位を有することを認めているのでもない

寧ろこれ等諸々の一般的基本的人権と労働者の権利との調和をこそ

期待しているのであつて、この調和を破らないことが、

即ち争議権の正当性の限界である。

 

その調和点を何処に求めるべきかは、

法律制度の精神を全般的に考察して決すべきである。

 

固より使用者側の自由権や財産権と雖も絶対無制限ではなく、

労働者の団体行動権等のため

ある程度の制限を受けるのは当然であるが、

原判決の判示する程度に、使用者側の自由意思を抑圧し、

財産に対する支配を阻止することは、

許さるべきでないと認められる。

 

それは労働者側の争議権を偏重して

使用者側の権利を不当に侵害し、

法が求める調和を破るものだからである。

 

わが国現行の法律秩序は私有財産制度を

基幹として成り立っており、

企業の利益と損失とは資本家に帰する。

 

従って企業の経営、生産行程の指揮命令は、

資本家又はその代理人たる経営担当者の権限に属する。

 

勞働者が所論のように企業者と並んで

企業の担当者であるとしても、

その故に当然に勞働者が企業の使用収益権を有するのでもなく、

経営権に対する権限を有するのでもない。

 

従って労働者側が企業者側の私有財産の基幹を搖がすような

争議手段は許されない

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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