第一次国会乱闘事件
(昭和37年1月22日東京地裁)
国会の会期末日に参議院議員のX1は、
議長応接室で開かれた議院運営委員会に委員として出席し、
委員会を傍聴していた議員のX2とともに、
職務中の同委員会委員長に全治3か月の障害を負わせ、
また議員のX3は衛視に全治1週間の傷害を負わせました。
3人は公務執行妨害罪で起訴されましたが、
議員の院内での活動に対する起訴は、
議院の告訴・告発が必要であると主張しました。
東京地裁の見解
裁判所の見解を要約します。
民主主義にとっては社会の健全な発達をもたらすために
言論の自由を確保することが必要不可欠の要件であり、
直接国家意思の形成にあたる議員の議会における発言は
一般国民に比してより
一層の自由が確保されなければならない。
国会では行政、司法等に対する
徹底的な批判が行わなければならず、
そのため往々にして個人の名誉、
社会の治安を害することがありうるのであり、
通常の場合には尊重さるべき個人、社会等の反対利益も
譲歩を余儀なくされざるを得ないのであって、
もしこれにかかずらっているときは言論を萎縮させ、
また場合によってはこれを抑圧することになりかねない。
憲法において議員の院内の言論について院外における
責任免除の特権を認めたのは
このような政策的考慮から処分を免除し、
発言の自由を保障し、もって国会の機能を遺憾なく
発揮せしめんことを企図したものである。
免責特権の対象となる行為は、
憲法に列挙された演説、討論または表決等の
本来の行為そのものに限定せらるべきものではなく、
議員の国会における意見の表明とみられる
行為にまで拡大されるべきとして、
議員の職務行為に付随した行為にもこれが及ぶという考えも
一概にこれを排斥することはできない。
議員の院内活動についても議院の告発を起訴条件とするならば、
職務行為に無関係な犯罪行為についても
検察庁はこれを起訴し得ないこととなり、
場合によっては多数派の考え方次第では、
普通の犯罪が隠蔽されるおそれを生ずる。
また、議員の議事活動に付随して発生した犯罪について
職務行為の範囲内外を審理決定する権限は
現行法上国会に与えられていない。
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