少年法20条1項、刑訴法463条1項、338条4号
(平成26年1月20日最高裁)
事件番号 平成25(さ)4
この裁判では、
少年につき禁錮以上の刑に当たる罪として家庭裁判所から
少年法20条1項の送致を受けた事件をそれと
事実の同一性が認められる罰金以下の刑に当たる
罪の事件として公訴を提起することの許否について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
伊勢崎簡易裁判所は,平成25年4月9日,
同年3月26日付けの被告人に対する
道路交通法違反被告事件の公訴提起に基づき,
「被告人は,(1) 公安委員会の運転免許を受けないで,
平成24年6月11日午前11時42分頃,
群馬県伊勢崎市連取町1613番地付近道路において,
普通乗用自動車を運転し,(2) 法定の除外事由がないのに,
前記日時頃,道路標識により右折方向への車両の通行を
禁止されている前記場所先交差点において,
同標識を確認しこれに従うべき注意義務があるのに,
同標識を確認しなかった過失により,
通行禁止場所であることに気付かないで,
普通乗用自動車を運転して右折通行した。」
との事実を認定した上,被告人を
罰金20万7000円に処する旨の略式命令を発付し,
同略式命令は,平成25年4月26日確定した。
ところで,一件記録によると,被告人は,平成25年2月14日,
前記(1)の事実のほか,前記(2)の事実と同一性が認められる,
普通乗用自動車を運転して故意により
通行禁止場所を通行したとの事実により
前橋家庭裁判所の検察官送致決定を受けたが,
伊勢崎区検察庁検察官は,前記(1),(2)の事実で
公訴を提起し,略式命令を請求したものであることが認められる。
しかし,被告人は,上記公訴提起当時少年であり,かつ,
前記(2)の事実は,罰金以下の刑に当たる罪の事件であるから,
少年法20条1項の趣旨に照らし,検察官が家庭裁判所から
送致を受けた故意による通行禁止違反の事実と同一性が
認められるからといって,公訴を提起することは
許されなかったものと解するほかはない。
そうすると,略式命令の請求を受けた伊勢崎簡易裁判所は,
前記(2)の事実につき刑訴法463条1項,338条4号により
公訴棄却の判決をすべきであった。
これをしなかった原略式命令は,法令に違反し,かつ,
被告人のために不利益であることが明らかである。
よって,本件非常上告は理由があるから,
刑訴法458条1号により原略式命令を破棄し,
原略式命令の罪となるべき事実中,被告人が
普通乗用自動車を運転して過失により
通行禁止場所を通行したとの事実につき,
同法338条4号により公訴を棄却し,
その余の原略式命令によって確定された事実につき,
被告人の所為は,平成25年法律第43号による
改正前の道路交通法117条の4第2号,64条に該当するので,
所定刑中罰金刑を選択し,その所定金額の範囲内で
被告人を罰金20万円に処し,被告人は
原略式命令当時少年であったから,
少年法54条により労役場留置の言渡しをしないこととし,
裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
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