主張、立証責任(伊方原発事件)
(平成4年10月29日最高裁)
事件番号 昭和60(行ツ)133
この裁判では、
原子炉設置許可処分の取消訴訟における
主張・立証、審理・判断の方法について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
右の原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる
原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、
原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の
専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた
被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から
行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、
右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、
あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした
原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び
判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、
被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、
被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、
右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。
原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、
右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、
被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、
本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の
安全審査に関する資料をすべて
被告行政庁の側が保持していることなどの点を
考慮すると、被告行政庁の側において、まず、
その依拠した前記の具体的審査基準並びに
調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に
不合理な点のないことを相当の
根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、
被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、
被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが
事実上推認されるものというべきである。
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