秘密保持命令の申立てをすることの許否

(平成21年1月27日最高裁)

事件番号  平成20(許)36

 

この裁判では、

秘密保持命令の申立てをすることの許否について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において,

提出を予定している準備書面や証拠の内容に

営業秘密が含まれる場合には,

当該営業秘密を保有する当事者が,相手方当事者により

これを訴訟の追行の目的以外の目的で使用され,

又は第三者に開示されることによって,

これに基づく事業活動に支障を生ずるおそれがあることを危ぐして,

当該営業秘密を訴訟に顕出することを差し控え,

十分な主張立証を尽くすことができないという事態が生じ得る。

特許法が,秘密保持命令の制度

(同法105条の4ないし105条の6,

200条の2,201条)を設け,

刑罰による制裁を伴う秘密保持命令により,

当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用すること及び

同命令を受けた者以外の者に開示することを

禁ずることができるとしている趣旨は,

上記のような事態を回避するためであると解される。

 

特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,

仮処分命令の必要性の有無という

本案訴訟とは異なる争点が存するが,

その他の点では本案訴訟と争点を共通にするものであるから,

当該営業秘密を保有する当事者について,

上記のような事態が生じ得ることは

本案訴訟の場合と異なるところはなく,

秘密保持命令の制度が

これを容認していると解することはできない。

 

そして,上記仮処分事件において

秘密保持命令の申立てをすることができると解しても,

迅速な処理が求められるなどの

仮処分事件の性質に反するということもできない。

 

特許法においては,「訴訟」という文言が,

本案訴訟のみならず,民事保全事件を

含むものとして用いられる場合もあり

(同法54条2項,168条2項),

上記のような秘密保持命令の制度の趣旨に照らせば,

特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,

特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する

「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し,

上記仮処分事件においても,秘密保持命令の申立てをすることが

許されると解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事