不利益変更禁止の原則
(平成27年11月30日最高裁)
事件番号 平成26(受)2146
この裁判では、
訴訟上の和解が成立したことによって
訴訟が終了したことを宣言する
第1審判決に対し被告のみが控訴した場合と
不利益変更禁止の原則について裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
(1) 訴訟上の和解の無効を主張する者は,
当該和解が無効であることの確認を求める訴えを
提起することができると解されるが,
記録によれば,本件においては,
いずれの当事者も本件和解が
無効であることの確認は求めていない。
それにもかかわらず,主文において
本件和解が無効であることを確認した原判決には,
当事者が申し立てていない事項について判決をした違法があり,
この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかである。
(2) また,訴訟上の和解が成立したことによって
訴訟が終了したことを宣言する
終局判決(以下「和解による訴訟終了判決」という。)は,
訴訟が終了したことだけを既判力をもって
確定する訴訟判決であるから,これと比較すると,
原告の請求の一部を認容する本案判決は,
当該和解の内容にかかわらず,形式的には被告に
とってより不利益であると解される。
したがって,和解による訴訟終了判決である
第1審判決に対し,被告のみが控訴し原告が控訴も
附帯控訴もしなかった場合において,
控訴審が第1審判決を取り消した上原告の請求の一部を
認容する本案判決をすることは,
不利益変更禁止の原則に違反して
許されないものというべきである。
そして,和解による訴訟終了判決に対する
控訴の一部のみを棄却することは,
和解が対象とした請求の全部について
本来生ずべき訴訟終了の効果を
その一部についてだけ生じさせることになり,
相当でないから,上記の場合において,
控訴審が訴訟上の和解が無効であり,かつ,
第1審に差し戻すことなく請求の一部に理由があるとして
自判をしようとするときには,控訴の全部を
棄却するほかないというべきである。
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