賃料増減請求により増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力

(平成26年9月25日最高裁)

事件番号  平成25(受)1649

 

この裁判では、

借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減請求により

増減された賃料額の確認を求める訴訟の確定判決の既判力について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

借地借家法32条1項所定の賃料増減請求権は形成権であり,

その要件を満たす権利の行使がされると当然に効果が生ずるが,

その効果は,将来に向かって,増減請求の範囲内かつ

客観的に相当な額について生ずるものである

(最高裁昭和30年(オ)第460号同32年9月3日

第三小法廷判決・民集11巻9号1467頁等参照)。

 

また,この効果は,賃料増減請求があって初めて

生ずるものであるから,賃料増減請求により増減された

賃料額の確認を求める訴訟(以下「賃料増減額確認請求訴訟」という。)の

係属中に賃料増減を相当とする事由が生じたとしても,

新たな賃料増減請求がされない限り,

上記事由に基づく賃料の増減が生ずることはない

(最高裁昭和43年(オ)第1270号同44年4月15日

第三小法廷判決・裁判集民事95号97頁等参照)。

 

さらに,賃料増減額確認請求訴訟においては,

その前提である賃料増減請求の当否及び相当賃料額について

審理判断がされることとなり,

これらを審理判断するに当たっては,

賃貸借契約の当事者が現実に合意した賃料のうち直近のもの

(直近の賃料の変動が賃料増減請求による場合には

それによる賃料)を基にして,その合意等がされた日から

当該賃料増減額確認請求訴訟に係る賃料増減請求の日までの

間の経済事情の変動等を総合的に考慮すべきものである

(最高裁平成18年(受)第192号同20年2月29日

第二小法廷判決・裁判集民事227号383頁参照)。

 

したがって,賃料増減額確認請求訴訟においては,

その前提である賃料増減請求の効果が生ずる時点より後の事情は,

新たな賃料増減請求がされるといった特段の事情のない限り,

直接的には結論に影響する余地はないものといえる。

 

また,賃貸借契約は継続的な法律関係であり,

賃料増減請求により増減された時点の賃料が法的に確定されれば,

その後新たな賃料増減請求がされるなどの特段の事情がない限り,

当該賃料の支払につき任意の履行が

期待されるのが通常であるといえるから,

上記の確定により,当事者間における賃料に係る紛争の直接かつ

抜本的解決が図られるものといえる。

 

そうすると,賃料増減額確認請求訴訟の請求の趣旨において,

通常,特定の時点からの賃料額の確認を求めるものとされているのは,

その前提である賃料増減請求の効果が

生じたとする時点を特定する趣旨に止まると解され,

終期が示されていないにもかかわらず,

特定の期間の賃料額の確認を求める趣旨と

解すべき必然性は認め難い。

 

以上の事情に照らせば,

賃料増減額確認請求訴訟の確定判決の既判力は,

原告が特定の期間の賃料額について確認を求めていると

認められる特段の事情のない限り,

前提である賃料増減請求の効果が生じた時点の

賃料額に係る判断について生ずると解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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