具体的事件を離れて最高裁判所は抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるか

(昭和27年10月8日最高裁)

事件番号  昭和27(マ)23

 

この裁判では、

具体的事件を離れて最高裁判所は

抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

わが裁判所が現行の制度上与えられているのは

司法権を行う権限であり、

そして司法権が発動するためには

具体的な争訟事件が提起されることを必要とする

 

我が裁判所は具体的な争訟事件が

提起されないのに将来を予想して

憲法及びその他の法律命令等の解釈に対し

存在する疑義論争に関し抽象的な判断を

下すごとき権限を行い得るものではない

 

けだし最高裁判所は法律命令等に関し違憲審査権を有するが、

この権限は司法権の範囲内において行使されるものであり、

この点においては最高裁判所と下級裁判所との間に

異るところはないのである(憲法76条1項参照)。

 

原告は憲法81条を以て主張の根拠とするが、

同条は最高裁判所が憲法に関する事件について

終審的性格を有することを規定したものであり、

従って最高裁判所が固有の権限として

抽象的な意味の違憲審査権を有すること並びに

それがこの種の事件について排他的なすなわち第一審にして

終審としての裁判権を有するものと推論することを得ない。

 

原告が最高裁判所裁判官としての

特別の資格について述べている点は、

とくに裁判所法41条1項の趣旨に関すると認められるが

これ最高裁判所が合憲牲の審査のごとき重要な事項について

終審として判断する重大な責任を負うていることからして

十分説明し得られるのである。

 

なお最高裁判所が原告の主張するがごとき

法律命令等の抽象的な無効宣言をなす権限を有するものとするならば、

何人も違憲訴訟を最高裁判所に提起することにより

法律命令等の効力を争うことが頻発し、

かくして最高裁判所はすべての国権の上に位する機関たる観を呈し

三権独立し、その間に均衡を保ち、

相互に侵さざる民主政治の根本原理に背馳するにいたる

恐れなしとしないのである。

 

要するにわが現行の制度の下においては、

特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ

裁判所にその判断を求めることができるのであり、

裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に

法律命令等の合憲牲を判断する権限を有するとの見解には、

憲法上及び法令上何等の根拠も存しない。

 

そして弁論の趣旨よりすれば、

原告の請求は右に述べたような具体的な法律関係についての

紛争に関するものでないことは明白である。

 

従って本訴訟は不適法であって、

かかる訴訟については

最高裁判所のみならず如何なる

下級裁判所も裁判権を有しない。

 

この故に本訴訟はこれを

下級裁判所に移送すべきものでもない。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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