各航空機運航差止等請求事件

(平成28年12月8日最高裁)

事件番号  平成27(行ヒ)512

 

この裁判では、

航空基地の供用差止めについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により,

睡眠妨害やその他の生活妨害を受け,

その人格的利益が大きく損なわれており,

特に睡眠妨害の程度は相当深刻である。

 

第1審原告らに生じているこのような損害の性質及び

程度,損害回復の困難の程度を踏まえると,

本件飛行場における自衛隊機の運航に公共性や

公益性の高いものが多いことなど処分の内容,

性質を考慮しても,第1審原告らの上記訴えについては,

行政事件訴訟法37条の4第1項の,

当該処分がされることにより「重大な損害を生ずるおそれ」

があると認められる。

 

防衛大臣は、その権限の行使に当たっては,我が国の平和と安全,

国民の生命,身体,財産等の保護に関わる内外の情勢,

自衛隊機の運航の目的及び必要性の程度,同運航により

周辺住民にもたらされる騒音による被害の性質及び

程度等の諸般の事情を総合考慮してなされるべき高度の

政策的,専門技術的な判断を要することが明らかであるから,

上記の権限の行使は,

防衛大臣の広範な裁量に委ねられているものというべきである。

 

 

自衛隊が設置する飛行場における自衛隊機の運航に係る

防衛大臣の権限の行使が,

行政事件訴訟法37条の4第5項の差止めの要件である,

行政庁がその処分をすることが

その裁量権の範囲を超え又はその濫用となると

認められるときに当たるか否かについては,

同権限の行使が,上記のような防衛大臣の

裁量権の行使としてされることを前提として,

それが社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと

認められるか否かという観点から審査を行うのが相当であり,

その検討に当たっては,当該飛行場において継続してきた

自衛隊機の運航やそれによる

騒音被害等に係る事実関係を踏まえた上で,

当該飛行場における自衛隊機の運航の目的等に照らした

公共性や公益性の有無及び程度,

上記の自衛隊機の運航による騒音により

周辺住民に生ずる被害の性質及び程度,

当該被害を軽減するための措置の有無や

内容等を総合考慮すべきものと考えられる。

 

本件飛行場において継続してきた自衛隊機の運航やそれによる

騒音被害等に係る事実関係を踏まえると,

前記の自衛隊機の運航には

高度の公共性,公益性があるものと認められ,

他方で,本件飛行場における航空機騒音により

第1審原告らに生ずる被害は軽視することができないものの,

周辺住民に生ずる被害を軽減するため,自衛隊機の運航に係る

自主規制や周辺対策事業の実施など

相応の対策措置が講じられているのであって,

これらの事情を総合考慮すれば,本件飛行場において,

将来にわたり上記の自衛隊機の運航が行われることが,

社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認めることは

困難であるといわざるを得ない

 

本件飛行場における前記の

自衛隊機の運航に係る防衛大臣の権限の行使が,

行政事件訴訟法37条の4第5項の行政庁が

その処分をすることがその裁量権の範囲を超え又は

その濫用となると認められるときに

当たるということはできないと解するのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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