固定資産評価審査委員会の口頭審理
(平成2年1月18日最高裁)
事件番号 昭和61(行ツ)138
この裁判では、
固定資産評価審査委員会の口頭審理について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
法が固定資産の登録価格についての
不服の審査を評価、課税の主体である
市町村長から独立した第三者的機関である
委員会に行わせることとしているのは、
中立の立場にある委員会に
固定資産の評価額の適否に関する審査を行わせ、
これによって固定資産の評価の客観的合理性を担保し、
納税者の権利を保護するとともに、
固定資産税の適正な賦課を期そうとするものであり、
さらに、口頭審理の制度は、固定資産の評価額の適否につき
審査申出人に主張、証拠の提出の機会を与え、
委員会の判断の基礎及びその過程の客観性と
公正を図ろうとする趣旨に出るものであると解される。
そうであってみれば、口頭審理の手続は、
右制度の趣旨に沿うものでなければならないが、
それはあくまでも簡易、迅速に
納税者の権利救済を図ることを目的とする
行政救済手続の一環をなすものであって、
民事訴訟におけるような厳格な意味での口頭審理の方式が
要請されていないことはいうまでもない。
納税者は、固定資産課税台帳を閲覧して
その所有に係る宅地の評価額を知り、これに不服を抱いた場合に、
不服事由を具体的に特定するために必要なその評価の手順、方法、
根拠等をほとんど知ることができないのが通常である。
したがって、宅地の登録価格について審査の申出があった場合には、
口頭審理制度の趣旨及び公平の見地から、委員会は、自ら又は
市町村長を通じて、審査申出人が不服事由を特定して主張するために
必要と認められる合理的な範囲で評価の手順、方法、根拠等を
知らせる措置を講ずることが要請されているものと解される。
しかし、委員会は、審査申出人において他の納税者の
宅地の評価額と対比して評価が公平であるかどうかを
検討することができるように、
他の状況類似地域における宅地の評価額等を
了知できるような措置を講ずることまでは
要請されていないものというべきである。
委員会は、口頭審理を行う場合においても、
口頭審理外において職権で事実の調査を行うことを
妨げられるものではないところ(法433条1項)、
その場合にも審査申出人に立会いの機会を
与えることは法律上要求されていない。
また、委員会は、当該市町村の条例の定めるところによって、
審査の議事及び決定に関する記録を作成し、
法430条の規定によって提出させた資料又は右の記録を関係者の閲覧に
供しなければならないとされているのであって
(法433条4項、5項、大和郡山市固定資産評価審査委員会条例
(昭和38年大和郡山市条例第2号)7条ないし9条)、審査申出人は、
右資料及び右条例によって作成される事実の調査に関する記録を閲覧し、
これに関する反論、証拠を提出することができるのであるから、
委員会が口頭審理外で行った調査の結果や収集した資料を判断の基礎として
採用し、審査の申出を棄却する場合でも、
右調査の結果等を口頭審理に上程するなどの
手続を経ることは要しないものと解すべきである。
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