教育委員会の会議の公開違反の瑕疵
(昭和49年12月10日最高裁)
事件番号 昭和44(行ツ)8
この裁判では、
教育委員会の会議の公開違反の瑕疵が
その議決の取消事由にあたるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
旧教育委員会法は、教育行政の民主化の原理に基づき、
その運営に民意を反映させるために、
教育委員会の委員の選任について
当該地方公共団体の住民による公選制を採用し(7条以下)、
委員会の会議を招集するときは
法定期間前にこれを告示させ(34条4項)、
その会議はこれを公開すべきものとし、
出席委員の3分の2以上の多数で議決したときに限って
秘密会を開くことができると定めている(37条)。
これらの規定によれば、
同法のもとにおける教育委員会の会議の公開は、
会議の公正な運営を確保するとともに、
各委員の活動を住民の直接の監視と批判にさらし、
あわせて次期選挙の際における判断資料を
得させるためのものであるという点において、
重要な意義を有するものであり、
これに違反して行われた議事が
瑕疵を帯びるものであることは、いうまでもない。
しかしながら、このことから直ちに、
教育委員会の会議の過程において形式上いささかでも
右公開原則に違反するところがあれば、
常にその議決の効力に
影響を及ぼすものとすることは相当でなく、
具体的事案における違反の程度及び態様が
当該議案の議事手続全体との関係からみて
実質的に前記公開原則の趣旨目的に
反するというに値いしないほど軽微であって、
その瑕疵が議決の効力に影響を及ぼすとするには
足りない場合もありうるものと解すべきである。
本件についてみると、本件免職処分は、
被上告委員会の出席委員5名の全員一致により
秘密会で審議することとされた会議において、
議決されたものであるが、
右秘密会で審議する旨の議決そのものに
公開違反の瑕疵があり、その瑕疵がひいて
右免職処分の議決をも
違法ならしめるものであると主張されているのである。
しかし、原審の認定するところによれば、
被上告委員会においては、従来人事に関する案件はすべて
秘密会で審議されていたものであって、
各委員ともこれを了知しており、
さればこそ上告人らについての
人事に関する本件処分案件も出席委員全員の賛成により
秘密会で審議することとされたというのであるから、
右秘密会で審議する旨の議決自体はいわば
予定されていたところともいえるのであって、
これを公開の会議で行うことは、
その議決の公正を確保する面からは
実質的にさして重要な意義を
有するものでなかったということができる。
また、原審認定の事実に徴すれば、被上告委員会において、
本件処分案件を秘密会で審議する旨の議決を
全面的に非公開で行うこととする
積極的な措置をとったものとまでは認められず、
むしろ、上告人ら旭ケ丘関係者だけが
傍聴することができない状況のもとで会議が開かれたため、
会議の完全な公開がその限度でされなかったにとどまり、
右秘密会で審議する旨の議決が全く
秘密裡にされたものであるということもできないのである。
以上の点をあわせ考えるときは、
本件免職処分の議決には、
その審議を秘密会でする旨の議決が
完全な公開のもとにない会議で行われたという点において
形式上公開違反の瑕疵があるとはいえ、
右処分案件の議事手続全体との関係からみれば、
その違反の程度及び態様は実質的に
前記公開原則の趣旨目的に反するというに値いしないほど軽微であり、
これをもって右免職処分の議決そのものを
取り消すべき事由とするには
あたらないものと解するのが、相当である。
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