特別支給の老齢厚生年金決定取消請求事件

(平成29年4月21日最高裁)

事件番号  平成28(行ヒ)14

 

この裁判では、

厚生年金保険法附則8条の規定による老齢厚生年金について

厚生年金保険法(平成24年法律第63号による

改正前のもの)43条3項の規定による

年金の額の改定がされるために同項所定の期間を

経過した時点において当該年金の受給権者であることの要否について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1)ア 法43条3項は,受給権者が被保険者である間の

老齢厚生年金の額を固定するため,

その権利を取得した月以後における被保険者期間を

その計算の基礎としないものとしたこと(同条2項)から,

被保険者である受給権者が被保険者の資格を喪失し,かつ,

被保険者となることなく待期期間を経過したときは,

上記被保険者期間をも含めて老齢厚生年金の額の

再計算をすることとしたものである。

 

そして,同条3項は,退職改定の対象となる者を

「被保険者である受給権者」と定めている以上,

待期期間を経過した時点においても当該年金の受給権者であることを

退職改定の要件としているものと解するのが文理に沿う解釈である。

 

イ また,法43条3項が前記2(3)イのとおり定めているのは,

老齢厚生年金の基本権に係る年金の額を

上記アの被保険者期間をも計算の基礎とするものに改定することにより,

基本権に基づき支払期日ごとに支払うものとされる保険給付の額を,

既に発生した保険給付の額も含め,当該改定後の基本権を

前提としたものに改定することとしたものと解されるから,

法は,退職改定がされる待期期間の経過時点においても

当該年金の基本権が存することを

予定しているものということができる。

 

これに加え,特別支給の老齢厚生年金については,

前記2のとおり,本来支給の老齢厚生年金とは

異なる発生要件が定められ(法附則8条),

特別支給の老齢厚生年金の受給権者が65歳に達したときは,

受給権が消滅し(法附則10条),本来支給の老齢厚生年金の

支給を受けるために改めて厚生労働大臣による

裁定を受けることとされており(法33条),

特別支給の老齢厚生年金の基本権の内容と

本来支給の老齢厚生年金のそれとを

必ず一致させることは予定されていないと

解されることをも併せ考えると,

上記アのように解することは,老齢厚生年金に

関する制度の仕組み等に沿うものということができる。

 

老齢厚生年金が保険料が拠出されたことに基づく

給付としての性格を有していることは,

以上の解釈を左右するものではない。

 

そうすると,特別支給の老齢厚生年金について

退職改定がされるためには,

被保険者である当該年金の受給権者が,

その被保険者の資格を喪失し,かつ,

被保険者となることなくして待期期間を経過した時点においても,

当該年金の受給権者であることを要すると解するのが相当である。

 

(2) これを本件についてみるに,

前記事実関係等によれば,

被上告人は,平成23年8月31日に厚生年金保険の

被保険者の資格を喪失した後,同年9月17日に65歳に達しており,

同月30日を経過した時点では特別支給の

老齢厚生年金の受給権者でなかったというのであるから,

同月分の当該年金の額については退職改定が

されるものでないことは明らかである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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