薬事法の製造等の承認
(平成11年10月22日最高裁)
事件番号 平成10(行ヒ)43
この裁判では、
医薬品の製造又は輸入を業として行うために必要な、
薬事法に基づく許可について裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
医薬品の製造又は輸入を業として行うためには、
薬事法に基づく許可を受けなければならないが(薬事法12条、22条)、
その許可の申請者が、製造又は輸入しようとする医薬品につき、
承認を受けていないときは、その品目について右許可を
受けることができない(同法13条1項、23条)。
承認は、医薬品の有効性、安全性を
公認する行政庁の行為であるが、
これによって、その承認の申請者に製造業等の許可を
受け得る地位を与えるものであるから、
申請者に対する行政処分としての
性質を有するものということができる。
そうすると、承認の効力は、特別の定めがない限り、
当該承認が申請者に到達した時、すなわち申請者が現実に
これを了知し又は了知し得べき状態におかれた時に
発生すると解するのが相当である。
そして、関係法令を検討しても
承認の告知方法を定めた規定は存在しないが、
薬事法14条1項、13条1項等の文理からすれば、
告知に関する規定がないことをもって、
同法が、承認について申請者への告知を
不要としているものとは解されず、
他に申請者への到達なしに承認の効力が
生ずることをうかがわせる定めはない。
また、特許権の存続期間の延長に関する
特許法の諸規定(旧法67条3項、67条の2第3項等)も、
延長登録の理由となる処分はその処分が相手方に到達した時に
効力を生ずることを前提としているものと解される。
したがって、延長登録の理由となる処分としての承認は、
申請者に到達した時にその効力が
発生するものというべきである。
右のように、延長登録の理由となる処分である
薬事法所定の承認が申請者に到達した時に、
承認の効力が生じ、承認を受けることが必要であるために
特許発明の実施をすることができない状態が
解除されることになるから、
その効力が生じた日は、
旧法67条3項、67条の3第1項4号所定の処分を
受けることが必要であるために
特許発明の実施をすることができなかった期間には含まれず、
右期間の終期は、承認が申請者に到達した日の前日となる。
以上のとおりであるから、旧法67条の3第1項4号にいう
「特許発明の実施をすることができなかった期間」は、
医薬品に関しては、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は
特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、
承認が申請者に到達することにより処分の効力が
発生した日の前日までの期間であると解すべきものである。
したがって、本件承認が
G薬品株式会社に到達した日を確定することなく、
本件承認書に記載された日付である
平成3年6月28日の前日をもって
本件特許発明の実施をすることができなかった期間の終期と解し、
本件出願が旧法67条の3第1項4号に該当することを理由に
本件出願を拒絶した本件審決は、違法であって、
取り消されるべきものである。
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