高等学校学習指導要領から逸脱する授業をしたこと等を理由とする県立高等学校教諭に対する懲戒免職処分

(平成2年1月18日最高裁)

事件番号  昭和59(行ツ)46

 

この裁判では、

 高等学校学習指導要領から逸脱する授業をしたこと等を理由とする

県立高等学校教諭に対する懲戒免職処分について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

思うに、高等学校の教育は、高等普通教育及び

専門教育を施すことを目的とするものではあるが、

中学校の教育の基礎の上に立って、所定の修業年限の間に

その目的を達成しなければならず(学校教育法41条、46条参照)、また、

高等学校においても、教師が依然生徒に対し相当な影響力、

支配力を有しており、生徒の側には、

いまだ教師の教育内容を批判する十分な能力は備わっておらず、

教師を選択する余地も大きくないのである。

 

これらの点からして、国が、教育の一定水準を維持しつつ、

高等学校教育の目的達成に資するために、

高等学校教育の内容及び方法について

遵守すべき基準を定立する必要があり、

特に法規によってそのような基準が

定立されている事柄については、

教育の具体的内容及び方法につき

高等学校の教師に認められるべき

裁量にもおのずから制約が存するのである。

 

懲戒事由に該当する被上告人らの前記各行為は、

高等学校における教育活動の中で枢要な部分を占める

日常の教科の授業、考査ないし

生徒の成績評価に関して行われたものであるところ、

教育の具体的内容及び方法につき

高等学校の教師に認められるべき

裁量を前提としてもなお、明らかにその範囲を逸脱して、

日常の教育のあり方を律する学校教育法の規定や

学習指導要領の定め等に明白に違反するものである

 

しかも、被上告人らの右各行為のうち、

各教科書使用義務違反の点は、いずれも年間を通じて

継続的に行われたものであって、

特に被上告人B2の教科書不使用は、

所定の教科書は内容が自分の考えと違うとの立場から

使用しなかったものであること、

被上告人B1の日本史の考査の出題及び

授業、地理Bの考査の出題の点は、その内容自体からみて、

当該各科目の目標及び内容からの逸脱が著しいと

みられるものであること等をも考慮するときは、

被上告人らの右各行為の法規違反の程度は

決して軽いものではないというべきである。

 

更に、当時のE高校の内外における前記のような背景の下で、

同校の校内秩序が極端に乱れた状態にあったことは明らかであり、

そのような状況の下において被上告人らが行った

前記のような特異な教育活動が、

同校の混乱した状態を助長するおそれの強いものであり、また、

生徒の父兄に強い不安と不満を抱かせ、

ひいては地域社会に衝撃を与えるようなものであったことは

否定できないところであって、

この意味における被上告人らの責任を軽視することはできない。

 

以上によれば、上告人が、所管に属する

A県下の県立高等学校等の教諭等職員の任免

その他の人事に関する事務を管理執行する立場において、

懲戒事由に該当する被上告人らの前記

各行為の性質、態様、結果、影響等のほか、

右各行為の前後における被上告人らの態度、懲戒処分歴等の

諸事情を考慮のうえ決定した本件各懲戒免職処分を、

社会観念上著しく妥当を欠くものとまではいい難く、

その裁量権の範囲を逸脱したものと判断することはできない。 

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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