鳴門市競艇従事員共済会への補助金違法支出損害賠償等請求事件
(平成28年7月15日最高裁)
事件番号 平成25(行ヒ)533
この裁判は、
市の経営する競艇事業の臨時従事員等により組織される共済会から
臨時従事員に対して支給される離職せん別金に充てるため,
市が共済会に対してした補助金の交付が,
地方自治法232条の2所定の公益上の必要性の判断に関する
裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものとして
違法であるとされた事例です。
最高裁判所の見解
離職せん別金は,離職又は死亡による
登録名簿からの抹消を支給原因とし,
その支給額は離職時の基本賃金に在籍年数及び
これを基準とする支給率を乗じるなどして算出され,
実際の支給額も相当高額に及んでおり,課税実務上も
退職手当等に該当するものとして取り扱われていたものである。
そして,離職せん別金は,共済会が
その規約に基づく事業の一つとして
臨時従事員に支給していたものであるが,
市が共済会に対し離職せん別金に要する経費を補助の対象として
交付していた離職せん別金補助金の額は,
離職せん別金に係る計算式と連動した計算式により
算出された金額の範囲内とされ,
本件における離職せん別金の原資に占める
本件補助金の割合は約97%に及んでいたのである。
これらの事実に照らせば,本件補助金は,
実質的には,市が共済会を経由して
臨時従事員に対し退職手当を支給するために
共済会に対して交付したものというべきである。
地方自治法204条の2は,普通地方公共団体は
法律又はこれに基づく条例に基づかずにはいかなる給与
その他の給付も職員に支給することができない旨を定め,
地方公営企業法38条4項は,企業職員の給与の種類及び
基準を条例で定めるべきものとしているところ,
本件補助金の交付当時,臨時従事員に対して離職せん別金又は
退職手当を支給する旨を定めた条例の規定はなく,
賃金規程においても臨時従事員の賃金の種類に
退職手当は含まれていなかった。
また,臨時従事員は,採用通知書により指定された
個々の就業日ごとに日々雇用されてその身分を有する者にすぎず,
給与条例の定める退職手当の支給要件(前記第1の2(3))を
満たすものであったということもできない。
そうすると,臨時従事員に対する離職せん別金に
充てるためにされた本件補助金の交付は,
地方自治法204条の2及び地方公営企業法38条4項の定める
給与条例主義を潜脱するものといわざるを得ず,
このことは,臨時従事員の就労実態等の
いかんにより左右されるものではない。
以上によれば,地方自治法232条の2の定める
公益上の必要性があるとしてされた本件補助金の交付は,
裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものであって,
同条に違反する違法なものというべきである。
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