リラックス法学部 憲法判例わかりやすい憲法判例 朝日訴訟(生存権)の概要と判決の趣旨をわかりやすく解説

 

わかりやすい憲法判例 朝日訴訟(生存権)

(最判昭和42年5月24日)

事件番号  昭和39(行ツ)14

 

Xさんは、重症の結核を患い、

生活保護法に基づく

医療扶助及び生活扶助を受けていましたが、

実のお兄さんから仕送りをしてもらうことになり、

社会福祉事務所長は、その仕送りの金額から

日用品費を控除した額を

医療費の一部負担額としてXさんに

負担させることにしました。

 

Xさんは、その保護変更処分に対して

不服申立てをしましたが、これが却下されたため、

生活保護処分に関する裁決取消訴訟を提起しました。

 

この裁判で注目された点は、

憲法の保障する「生存権」の法的性質と、

この裁判の途中でXさんが亡くなったので、

「生活保護受給権は相続の対象となるのか?」

というところです。

 

第二十五条  

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 

第一審では、

「健康で文化的な生活水準」

を維持する程度の保護に欠けるとして、

生活保護法3条、8条2項に

違反すると同時に、

実質的に憲法25条にも反すると

判断しましたが、控訴審では、

「本件生活保護基準はすこぶる低額ではあるが、

違法とまでは断定できない」

として、原判決を取消しました。

 

Xさんは上告しましたが、その後死亡し、

最高裁は、

「生活保護受領権は一身専属的な権利であるから

死亡により訴訟は終了した」と判示しました。

 

 

そして「念のため」ということで、

生活扶助基準の適否に関する

最高裁判所の意見を述べました。

 

「憲法25条1項はすべての国民が

健康で文化的な最低限度の生活を

営み得るように国政を運営すべきことを

国の責務として宣言したにとどまり、

直接個々の国民に

具体的権利を賦与したものではない」

 

「何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、

厚生大臣の合目的な裁量に委されてる。

そしてその判断は、当不当の問題として

政府の政治責任が問われることはあっても、

裁量の逸脱と濫用がある場合以外は、

違法の問題は生じない」

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

この判例は一般的には、

生存権のとらえ方として

プログラム規定説を採用したものと

評価されていますが、

立法裁量権の著しい逸脱があれば、

司法審査の可能性を認めるという

裁判規範性を認めている点で、

完全なプログラム規定説ではないと解されています。

 

ちなみに学説では、

生存権をどうとらえるかは抽象的権利説が有力とされています。

 

これらの学説についての解説はこちらをご参照ください↓

 プログラム規定説・法的権利説をわかりやすく解説

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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