サブリース契約の当事者が借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求

(平成15年10月21日最高裁)

事件番号  平成12(受)573

 

この裁判では、

サブリース契約の当事者が

借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件契約における合意の内容は,第1審原告が

第1審被告に対して本件賃貸部分を使用収益させ,

第1審被告が第1審原告に対して

その対価として賃料を支払うというものであり,

本件契約は,建物の賃貸借契約であることが明らかであるから,

本件契約には,借地借家法が適用され,

同法32条の規定も適用されるものというべきである。

 

本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが,

借地借家法32条1項の規定は,強行法規であって,

本件賃料自動増額特約によってもその適用を排除することが

できないものであるから,本件契約の当事者は,

本件賃料自動増額特約が存するとしても,

そのことにより直ちに上記規定に基づく

賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。

 

なお,前記の事実関係によれば,本件契約は,

不動産賃貸等を目的とする会社である第1審被告が,

第1審原告の建築した建物で転貸事業を行うために

締結したものであり,あらかじめ,

第1審被告と第1審原告との間において賃貸期間,

当初賃料及び賃料の改定等についての協議を調え,

第1審原告が,その協議の結果を前提とした収支予測の下に,

建築資金として第1審被告から

約50億円の敷金の預託を受けるとともに,

金融機関から約180億円の融資を受けて,

第1審原告の所有する土地上に

本件建物を建築することを内容とするものであり,

いわゆるサブリース契約と

称されるものの一つであると認められる。

 

そして,本件契約は,

第1審被告の転貸事業の一部を構成するものであり,

本件契約における賃料額及び本件賃料自動増額特約等に係る約定は,

第1審原告が第1審被告の転貸事業のために

多額の資本を投下する前提となったものであって,

本件契約における重要な要素であったということができる。

 

これらの事情は,本件契約の当事者が,

前記の当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから,

衡平の見地に照らし,借地借家法32条1項の規定に基づく

賃料減額請求の当否(同項所定の

賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び

相当賃料額を判断する場合に,

重要な事情として十分に考慮されるべきである。

 

以上により,第1審被告は,

借地借家法32条1項の規定により,

本件賃貸部分の賃料の減額を求めることができる

 

そして,上記のとおり,この減額請求の当否及び

相当賃料額を判断するに当たっては,

賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情

その他諸般の事情を総合的に考慮すべきであり,

本件契約において賃料額が決定されるに至った経緯や

賃料自動増額特約が付されるに至った事情,とりわけ,

当該約定賃料額と当時の近傍同種の建物の

賃料相場との関係(賃料相場とのかい離の有無,程度等),

第1審被告の転貸事業における収支予測にかかわる事情

(賃料の転貸収入に占める割合の

推移の見通しについての当事者の認識等),

第1審原告の敷金及び銀行借入金の返済の予定にかかわる事情等をも

十分に考慮すべきである

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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