債権差押命令申立て却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
(平成29年10月10日最高裁)
事件番号 平成28(許)46
この裁判では、
債権差押命令の申立書に請求債権中の遅延損害金につき
申立日までの確定金額を記載させる執行裁判所の取扱いに従って
債権差押命令の申立てをした債権者が差押債権の取立てとして
金員の支払を受けた場合,申立日の翌日以降の遅延損害金も
上記金員の充当の対象となるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
金銭債権に対する強制執行は,本来債務者に
弁済すれば足りた第三債務者に対して,
差押えによって,債務者への弁済を禁じ,
差押債権者への弁済又は供託をする等の義務を課すものであるから,
手続上,第三債務者の負担にも配慮がされなければならない。
本件取扱いは,請求債権の金額を確定することによって,
第三債務者自らが請求債権中の遅延損害金の金額を計算しなければ,
差押債権者の取立てに応ずべき金額が分からないという事態が
生ずることのないようにするための配慮として,
合理性を有するものである(最高裁平成20年(受)第1134号
同21年7月14日第三小法廷判決・民集63巻6号1227頁参照)。
そして,元金及びこれに対する支払済みまでの
遅延損害金の支払を内容とする債務名義を有する債権者は,
本来,請求債権中の遅延損害金を元金の
支払済みまでとする債権差押命令の発令を求め,
債務名義に表示された元金及びこれに対する支払済みまでの
遅延損害金相当額の支払を受けることができるのであるから,
本件取扱いに従って債権差押命令の申立てをした債権者は,
第三債務者の負担について上記のような配慮をする限度で,
請求債権中の遅延損害金を申立日までの
確定金額とすることを受け入れたものと解される。
そうすると,本件取扱いに従って
債権差押命令の申立てをした債権者は,
債権差押命令に基づく差押債権の取立てに係る金員の充当の場面では,
もはや第三債務者の負担に配慮をする必要がないのであるから,
上記金員が支払済みまでの遅延損害金に充当されることについて
合理的期待を有していると解するのが相当であり,
債権者が本件取扱いに従って
債権差押命令の申立てをしたからといって,
直ちに申立日の翌日以降の遅延損害金を
上記金員の充当の対象から除外すべき理由はないというべきである。
したがって,本件取扱いに従って
債権差押命令の申立てをした債権者が
当該債権差押命令に基づく差押債権の取立てとして
第三債務者から金員の支払を受けた場合,
申立日の翌日以降の遅延損害金も
上記金員の充当の対象となると解するのが相当である。
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