匿名組合契約の営業者の匿名組合員に対する善管注意義務違反
(平成28年9月6日最高裁)
事件番号 平成27(受)766
この裁判は、
匿名組合契約の営業者が新たに設立される株式会社に出資するなどし,
同社が営業者の代表者等から売買により株式を取得した場合において,
営業者に匿名組合員に対する善管注意義務違反があるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
前記事実関係によれば,被上告人らは,
被上告会社が資本金の8割の出資をする
Dの設立時において,Dが被上告人Y2及び
被上告人Y3から本件株式の全部を購入するという
本件売買契約を締結することを予定し,
被上告会社の代表取締役の弟である被上告人Y3において
Dの代表取締役としてこれを実行したものというべきである。
そして,被上告会社が,本件売買契約の締結を予定して
Dの設立時に出資をし,その発行する新株予約権付社債を引き受け,
Dに本件売買契約を締結させるという一連の行為は,
これにより被上告会社に生ずる損益が本件匿名組合契約に基づき
全部上告人に分配されることに鑑みると,
本件売買契約の買主であるDの利益・不利益が
被上告会社を通じて上告人の利益・不利益となることから,
本件売買契約の売主であり被上告会社の関係者である
被上告人Y2及び被上告人Y3と上告人との間に
実質的な利益相反関係が生ずるものであるといえる。
また,本件売買契約の売主が,
買主であるDの取締役や代表取締役であること,
本件株式に市場価格はない上,上告人が本件売買契約の
代金額の決定に関与する機会はないこと,
Dの設立時の被上告会社の出資及び
上記新株予約権付社債の引受けの合計額は
1億8000万円であり,本件売買契約の代金額は
1億5000万円であって,いずれも本件匿名組合契約に基づく
出資額の2分の1以上に及ぶものであることに照らすと,
上記一連の行為は上告人の利益を害する危険性の高いものというべきである。
以上によれば,被上告会社が上記一連の行為を行うことは,
上告人の承諾を得ない限り,営業者の
善管注意義務に違反するものと解するのが相当である。
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