民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒むことができる占有者と右盗品等の使用収益権
(平成12年6月27日最高裁)
事件番号 平成10(受)128
この裁判では、
民法194条に基づき盗品等の引渡しを拒むことができる
占有者と右盗品等の使用収益権について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
盗品又は遺失物(以下「盗品等」という。)の被害者又は
遺失主(以下「被害者等」という。)が
盗品等の占有者に対して
その物の回復を求めたのに対し、
占有者が民法194条に基づき支払った代価の弁償があるまで
盗品等の引渡しを拒むことができる場合には、占有者は、
右弁償の提供があるまで盗品等の使用収益を行う
権限を有すると解するのが相当である。
けだし、民法194条は、盗品等を競売若しくは
公の市場において又はその物と
同種の物を販売する商人から
買い受けた占有者が同法192条所定の要件を備えるときは、
被害者等は占有者が支払った代価を弁償しなければ
その物を回復することができないとすることによって、
占有者と被害者等との保護の均衡を図った規定であるところ、
被害者等の回復請求に対し占有者が民法194条に基づき
盗品等の引渡しを拒む場合には、被害者等は、
代価を弁償して盗品等を回復するか、
盗品等の回復をあきらめるかを選択することができるのに対し、
占有者は、被害者等が盗品等の回復をあきらめた場合には
盗品等の所有者として占有取得後の
使用利益を享受し得ると解されるのに、
被害者等が代価の弁償を選択した場合には
代価弁償以前の使用利益を喪失するというのでは、
占有者の地位が不安定になること甚だしく、
両者の保護の均衡を図った同条の
趣旨に反する結果となるからである。
また、弁償される代価には利息は
含まれないと解されるところ、
それとの均衡上占有者の使用収益を認めることが
両者の公平に適うというべきである。
右の一連の経緯からすると、被上告人は、
本件バックホーの回復をあきらめるか、
代価の弁償をしてこれを回復するかを
選択し得る状況下において、
後者を選択し、本件バックホーの引渡しを
受けたものと解すべきである。
このような事情にかんがみると、上告人は、
本件バックホーの返還後においても、
なお民法194条に基づき被上告人に対して
代価の弁償を請求することができるものと
解するのが相当である。
大審院昭和4年(オ)第634号同年12月11日判決・民集8巻923頁は、
右と抵触する限度で変更すべきものである。
そして、代価弁償債務は期限の定めのない債務であるから、
民法412条3項により被上告人は上告人から
履行の請求を受けた時から遅滞の責を負うべきであり、
本件バックホーの引渡しに至る前記の経緯からすると、
右引渡しの時に、代価の弁償を求めるとの
上告人の意思が被上告人に対して示され、
履行の請求がされたものと解するのが相当である。
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