理事の互選により選任された理事長につき,理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができるか
(平成29年12月18日最高裁)
事件番号 平成29(受)84
この裁判では、
理事長を建物の区分所有等に関する法律に定める管理者とし,
役員である理事に理事長を含むものとした上,
役員の選任及び解任について総会の決議を
経なければならない旨の定めがある規約を
有するマンション管理組合において,
理事の互選により選任された理事長につき,
理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
(1)ア 区分所有法によれば,区分所有者は,全員で,
建物等の管理を行うための団体を構成し,
同法の定めるところにより,集会を開き,規約を定め,
及び管理者を置くことができるとされ(3条),
規約に別段の定めがない限り,集会の決議によって,
管理者を選任し,又は解任することができるとされている(25条1項)。
そうすると,区分所有法は,集会の決議以外の方法による
管理者の解任を認めるか否か及びその方法について
区分所有者の意思に基づく自治的規範である規約に
委ねているものと解される。
イ そして,本件規約は,理事長を区分所有法に定める
管理者とし(43条2項),役員である理事に理事長等を
含むものとした上(40条1項),役員の選任及び解任について
総会の決議を経なければならない(53条13号)とする一方で,
理事は,組合員のうちから総会で選任し(40条2項),
その互選により理事長を選任する(同条3項)としている。
これは,理事長を理事が就く役職の1つと位置付けた上,
総会で選任された理事に対し,原則として,
その互選により理事長の職に就く者を
定めることを委ねるものと解される。
そうすると,このような定めは,
理事の互選により選任された理事長について
理事の過半数の一致により理事長の職を解き,
別の理事を理事長に定めることも総会で
選任された理事に委ねる趣旨と解するのが,
本件規約を定めた区分所有者の
合理的意思に合致するというべきである。
本件規約において役員の解任が
総会の決議事項とされていることは,
上記のように解する妨げにはならない。
ウ したがって,上記イのような定めがある規約を有する上告人においては,
理事の互選により選任された理事長につき,
本件規約40条3項に基づいて,理事の過半数の一致により
理事長の職を解くことができると解するのが相当である。
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