留置権の対抗力

(昭和47年11月16日最高裁)

事件番号  昭和45(オ)1055

 

この裁判では、

留置権の対抗力について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

確定事実によれば、残代金345万円については、

その支払に代えて提供土地建物を上告人に譲渡する旨の

代物弁済の予約がなされたものと解するのが相当であり、

したがって、その予約が完結されて

提供土地建物の所有権が上告人に移転し、

その対抗要件が具備されるまで、原則として、

残代金債権は消滅しないで残存するものと解すべきところ、

本件においては、提供土地建物の所有権は

いまだ上告人に譲渡されていない(その特定すらされていないことが

うかがわれる。)のであるから、

上告人はDに対して残代金債権を

有するものといわなければならない。

 

そして、この残代金債権は本件土地建物の明渡請求権と

同一の売買契約によって生じた債権であるから、

民法295条の規定により、上告人はDに対し、

残代金の弁済を受けるまで、本件土地建物につき

留置権を行使してその明渡を

拒絶することができたものといわなければならない

 

ところで、留置権が成立したのち債務者から

その目的物を譲り受けた者に対しても、

債権者がその留置権を主張しうることは、

留置権が物権であることに照らして明らかであるから、

本件においても、上告人は、

Dから本件土地建物を譲り受けた被上告人に対して、

右留置権を行使することをうるのである。

 

もっとも、被上告人は、

本件土地建物の所有権を取得したにとどまり、

前記残代金債務の支払義務を負ったわけではないが、

このことは上告人の右留置権行使の障害となるものではない。

 

また、右残代金345万円の債権は、

本件土地建物全部について生じた債権であるから、

同法296条の規定により、

上告人は右残代金345万円の支払を受けるまで

本件土地建物全部につき留置権を行使することができ、

したがって、被上告人の本訴請求は

本件建物の明渡を請求するにとどまるものではあるが、

上告人は被上告人に対し、残代金345万円の支払があるまで、

本件建物につき留置権を行使することができるのである。

 

ところで、物の引渡を求める訴訟において、

留置権の抗弁が理由のあるときは、引渡請求を棄却することなく、

その物に関して生じた債権の弁済と引換えに物の引渡を命ずべきであるが、

前述のように、被上告人は上告人に対して

残代金債務の弁済義務を負っているわけではないから、

Dから残代金の支払を受けるのと引換えに

本件建物の明渡を命ずべきものといわなければならない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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