親子関係不存在確認請求と権利の濫用

(平成18年7月7日最高裁)

事件番号  平成17(受)833

 

この裁判では、

親子関係不存在確認請求と権利の濫用について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

実親子関係不存在確認訴訟は,

実親子関係という基本的親族関係の存否について

関係者間に紛争がある場合に対世的効力を有する判決をもって

画一的確定を図り,これにより実親子関係を公証する

戸籍の記載の正確性を確保する機能を有するものであるから,

真実の実親子関係と戸籍の記載が異なる場合には,

実親子関係が存在しないことの確認を

求めることができるのが原則である。

 

しかしながら,上記戸籍の記載の正確性の要請等が

例外を認めないものではないことは,

民法が一定の場合に,戸籍の記載を真実の実親子関係と

合致させることについて制限を設けていること

(776条,777条,782条,783条,785条)などから

明らかである。

 

真実の親子関係と異なる出生の届出に基づき

戸籍上甲乙夫婦の嫡出子として記載されている丙が,

甲乙夫婦との間で長期間にわたり実の親子と同様に生活し,

関係者もこれを前提として

社会生活上の関係を形成してきた場合において,

実親子関係が存在しないことを判決で確定するときは,

虚偽の届出について何ら帰責事由のない丙に軽視し得ない

精神的苦痛,経済的不利益を強いることになるばかりか,

関係者間に形成された社会的秩序が

一挙に破壊されることにもなりかねない

 

そして,甲乙夫婦が既に死亡しているときには,

丙は甲乙夫婦と改めて養子縁組の届出をする手続を採って

同夫婦の嫡出子の身分を取得することもできない。

 

そこで,戸籍上の両親以外の第三者である丁が

甲乙夫婦とその戸籍上の子である丙との間の

実親子関係が存在しないことの確認を求めている場合においては,

甲乙夫婦と丙との間に実の親子と

同様の生活の実体があった期間の長さ,判決をもって

実親子関係の不存在を確定することにより丙及び

その関係者の被る精神的苦痛,経済的不利益,改めて

養子縁組の届出をすることにより丙が甲乙夫婦の嫡出子としての

身分を取得する可能性の有無,丁が

実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び

請求をする動機,目的,実親子関係が

存在しないことが確定されないとした場合に

丁以外に著しい不利益を受ける者の有無等の

諸般の事情を考慮し,実親子関係の不存在を確定することが

著しく不当な結果をもたらすものといえるときには,

当該確認請求は権利の濫用に当たり許されないものというべきである。

 

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

民法判例(親族・相続)をわかりやすく解説


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