リラックス法学部 民法をわかりやすく解説 >即時取得の要件

 

我が国の民法は、不動産に関しては、

登記に公信力を認めず、

権利の外観を信頼しても保護されないとしています。

 

一方、取引が頻繁な動産に関しては、

占有を信頼して取引した者の保護の必要性が

大きいと考えられ、動産には公信力が与えられています。

 

それが即時取得という制度です。

(即時取得)

第百九十二条  

取引行為によって、平穏に、かつ、

公然と動産の占有を始めた者は、

善意であり、かつ、過失がないときは、

即時にその動産について行使する権利を取得する。

 

今回は即時取得の要件について

説明していきたいと思います。

 

即時取得の要件

目的物

まず即時取得が成立するためには、

目的物は動産に限られます。

 

動産であれば、登記・登録できるものでも

対象となりますが、登記された船舶や

自動車、航空機については

即時取得は成立しないというのが、

判例・通説です。

 

即時取得は取引が頻繁に

行われる動産の外観を信頼して

取引したものを保護する趣旨ですので、

登記されたこれらのものは、

いわば不動産のように扱うと考えられることが

理由だと解されます。

 

また、金銭(現金)については

記念硬貨などは即時取得の対象になりますが、

原則として即時取得の対象とはなりません。

 

前主の要件

前主は処分権限がない者で、

占有がある者に限られます。

要するに占有しているものの、

本当の持ち主ではない(処分権限がない)者と

取引した場合が即時取得が

成立する要件のひとつになります。

 

 

有効な取引行為

売買・譲渡・質権設定契約など、

有効な取引行為の存在が要件になります。

相続等の包括承継は含まれません。

 

平穏・公然・善意・無過失

条文に「平穏に、かつ、

公然と動産の占有を始めた者は」

とある通り、平穏・公然が要求され、

善意・無過失も要求されます。

 

ただ、これら

平穏・公然・善意・無過失は

推定されるものとされています。

 

つまり、即時取得を主張する者は自分で

平穏・公然・善意・無過失を

立証する必要はありません。

 

なお、10年の時効取得の際も、

平穏・公然・善意・無過失が要件となっていますが、

こちらは平穏・公然・善意は推定されますが、

無過失は推定されないことと比較しましょう。

 

(所有権の取得時効)

第百六十二条  

二十年間、所有の意思をもって、

平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、

その所有権を取得する。

 

2  十年間、所有の意思をもって、

平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、

その占有の開始の時に、善意であり、かつ、

過失がなかったときは、その所有権を取得する。

 

という事で、今回は即時取得の要件について説明してまいりました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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